ニューオータニ美術館「冨嶽三十六景」は葛飾北斎の代表作で、当時の江戸の人々に浸透していた「富士山信仰」を背景に、庶民の生活に溶け込んだ富士を描いて大変な人気を博しました。その成功が、「美人画」や「役者絵」が主流であった浮世絵に「風景」の分野を確率させたといってもよいでしょう。この独自の風景画様式の樹立は、北斎自身の、西洋絵画における遠近法の研究があったことも指摘されています。
1864年、パリに生まれたリヴィエールは、18歳の時にモンマルトルのロドルフ・サリのカフェ「シャ・ノワール」のサークルに入り、当時流行のジャポニズムに触れました。当時「シャ・ノワール」には、芸術家や文化人、前衛知識人が多く出入りし、社会批判や政治談議が繰り広げられると同時に、芸術家たちの新しい作品発表の場となっていました。
リヴィエールが美術史上、特に重要な位置を占めるのは、木版がの復興と多色リトグラフの開発でした。日本美術商のサミュエル・ビングや林忠正とも交流し、熱心に日本美術の研究をしたリヴィエールは、北斎や広重の浮世絵から色彩や構図、題材、表現方法を学びました。また、木版がの制作方法も独学で研究し、道具も自作するほど情熱を傾けています。
1888年から1902年にかけて、リヴィエールが制作したのが「エッフェル塔三十六景」です。当初は木版画集にする予定で制作を始めましたが、数点を仕上げた後、より効率的に制作できるリトグラフに切り替えました。
この作品は、文字通り葛飾北斎の「富嶽三十六景」を意識しています。場面の選択や構図は北斎だけでなく、むしろ歌川広重からの影響もおおいに見て取れますが、作品全体から感じ取れる繊細さ、雄大さ、哀愁、対象への愛情は、間違いなく北斎の精神に通じています。
本展では、葛飾北斎「富嶽三十六景」全46点とアンリ・リヴィエール「エッフェル塔三十六景」全36点を同時に展観します。日本と西洋の芸術が相互に生かされた作品の中に、私たちは当時の美しい風景と、愛情をもって描かれた働く庶民の姿をみることができるでしょう。
■スライドトーク
日時: 9月24日(土) 14:00~15:30
当館学芸員がスライドによる作品解説を行います。
[画像: 葛飾北斎 「冨嶽三十六景より 神奈川沖浪裏」]
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