机の上には創作ネタなのか写真やら切抜きやらがいろいろ散らばっていて、壁には最終的な展示のラフ案が何気なく貼ってある。そしていくつもの描きかけのキャンバス。
あちこち見ていると、スケッチだけじゃなくて走り書きがあったり、無造作なコラージュがあったりする創作ノートみたいなものを本人が見せてくれる。中には脇に転がるキャンバス上に既に再現されているイメージもあれば、推敲の過程で見せたくないものになってしまったのか急いでめくられてしまうページも。
本人の私物(!?)と思わしきがらくたが、小さな絵とともに並べられている様も微笑ましい。なかなか仕上がらない絵と、このYOSHIDATEHOUSEの雰囲気が何となく気になって会期中何度か覗いた。
彼女は作品や自分にについてほとんど何も語らなくって、でもBlogはけっこうマメにつけているし、「ひとりごとアワー」とかいうフリーペーパー風のこともやっているみたいだ。展示のタイトルも 「Nothing, I was just thinking aloud.」
でも落書きだって飾ってしまえば「展示」だし、フリーペーパーのテーマが「ひとりごと」だなんてやっぱりおかしい。
そんな彼女の表現に土足であがりこんで、妙に共感してしまうのはなぜだろうか。それは、土俵は違えど非常に限られた現代の表現の領域の中で悩む、自分自身の姿と共通したものをそこに見つけたからなのかもしれない。
ただ彼女の作品は多くを語らないけどどっかで1本筋を通していて、例えば単純なラインと淡い色彩で描かれた画面の中で、人物の髪や衣服の部分に、必ずやぼったいくらいの黒色をのせている。その黒の黒さや淡々と制作に向かう彼女自身の姿に、絵を描いていくという意思の強さだけは十分に感じることができた。
*2006年1~3月にかけて、YOSHIDATEHOUSEにて筆者企画の個展を数回実施いたします。
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto