以前ではダイレクトに植物のモチーフを扱うことが多く、また花弁を部分ごとにあえて違う質感の布で表現するなど技法そのものの試みが目立ったが、近頃では写真のプリント生地を用いるなどして景色を作品に取り込んだり、ドローイングを取り入れるなどしてごく自由に他の技法を組み合わせた作風が多くなってきている。
今回の展示作品で特に私が気に入ったのは、「空」を大きく写し込んだ写真のプリント生地を一面に用いて、数枚の花弁が舞い落ちる様をその独特の技法とドローイングと両方とで表現したいくつかの作品である。まるで写真のシャッターを押した時に、彼女が実際にそこに舞い落ちる花弁を認めていたかのように見事な構図の描画であり、ドローイングも効果的に合わせることで表現により厚みが出ている。すなわち、絵画という2次元の表現領域を保ちつつも、より豊かな3次元の世界をそこに展開させることに成功しているのである。
*2006年1月7日~15日、筆者企画にて岩野仁美個展を開催いたします
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto