岩野の作品については、昨年の個展についてのレビューを読んでいただければ、おおよそご理解いただけると思うが、このような枠組みであるから、私は企画者であるにも関わらず、亀井の作品を今回の展示ではじめて目にしたのである。
亀井は、アクリルや樹脂など人工的な素材を用いつつも、どこか自然味溢れる不思議なオブジェを制作する。今回は卵よりもひと回りからふた回り程度の大きさで、レイヤー状に淡い青や紫色の色彩を忍ばせた半透明の球体を80個程度制作。雪を思わせる白い粉末を床へ円形に散らして、その上にインスタレーションした。壁にはそのオブジェが雪山に転がっている光景を収めた写真が掲出され、同様にして撮影されたであろう映像作品も展示されている。
オープニングは生憎の積雪であったが、展示を見に来ていただくにはある意味最適な天候だったのだ。
第二期:亀井紀彦展の様子
今回の展示は、彼が今まで作り続けてきた様々なオブジェそのものを強調するものではなかったが、ひとつひとつのオブジェをよく観察すると、それらは巧みに加工された工芸的美しさを兼ね備えているのがよく分かる。また和を感じさせる色彩感覚なども見ていて気持ちがよく、平面と立体という違いこそあれども、作品に共通性を見出すことの出来る岩野が亀井を好むのにも納得がいく。。。といったように、2つの展示をセットで見る面白さは結果的にも出たように思う。
第一期:岩野仁美展の様子
企画意図としては、会場であるYOSHIDATE HOUSEが入居する北仲WHITEという建物が、様々な作家のアトリエやデザイン・建築系の事務所などとして利用されており、各入居者がゆるやかにつながりつつもそれぞれの空間をベースに活動している中に、外部から時間というくくりの中でも変化のある企画を挿入してみることで、来場者や北仲の入居者にいつもとは異なるYOSHIDATE HOUSEの表情を提供する、キュレーターやハコの人間など企画側の立場とは異なる、作家ならではの視点・価値観に基づいてコーディネートされる展示ならではの魅力を提供する、といった点が主だったところである。
タイトルは、2つの展示のつながりを提示すると同時に、この企画を取り巻くひと・もの・ことに対してもこの企画が、よい意味で影響していければよいと考え決定した。実際には、北仲WHITEに入居しているアーティストが、岩野に作品素材の提案を行ったり、インディペンデントキュレーターの東谷隆司氏が、急遽トークショウをしようと持ちかけてきたり、亀井展のオープニングに雪が降ったりと、図らずとも何気に面白いことが起こってくれている。
完全にキュレーティングされたエキシビションもそれはそれで面白いが、時には枠組みだけ作り、来るものを積極的に受け入れていく。こういうやり方もあって良いだろう。
北仲は半ば閉じたスペースであるから、YOSHIDATE HOUSEの雰囲気も手伝いこういったことがやりやすかったところもあるが、ひとまず#1は成功と言ってよかったかもしれない。
3月に実施する#2も楽しみである。
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto