公開日:2007年6月18日

スーパーノーマル展

深澤直人氏とジャスパー・モリソン氏のキュレーションによるデザインの展覧会『スーパーノーマル展』が、25周年を迎えた六本木のAXISで開催されている。

「普通を超えるふつう」ということで、”スーパーノーマル”。人は、デザインに斬新さを求める傾向があるけれども、そうではなく「これ、普通じゃん」「なんか普通だね」と言う時の「ふつう」を、ネガティブにではなくポジティブに、考える。
あまりに普通すぎて意識にも残らないような物が、実は一番使いやすくて心地よかったりする。

たとえば、栓抜き、靴べら、ぺんてるのサインペン、アイスクリームのスプーン、喫茶店で出てくるスタッキング可能な水のコップ、人工芝みたいなクッションが付いた釣り銭トレイ、などなど。
いずれも、「ザ・××××」と呼べそうな、スタンダードなデザインのものたちが200点以上集められて並んでいる。デザインした人の名前すら分からないものも多い。でも、みんなが知っている。中には、蓋付きのジャーに入ったヤマト糊のような懐かしい物もある。 もちろん、2人がデザインした製品も数多く展示されている。

奇をてらおうということではなく、「そのものが落ち着くべきふさわしい形」を作る。人間の生活や行動のいろんなところに関わってくる、興味深いコンセプトである。それは、深澤氏が長年唱えてきた、「人間は、自分で決めて動いているのではなくて、環境に動かされている」というアフォーダンスの考え方にも通じる。
身の回りでそんな「ふつう」を探してみるのも楽しいけれど、今まで思っていた「ふつう」がどんどん進化していく可能性もある。 つまり、『変えてしまおうとするのではなく、ふつうのことを、「いいふつう」にする。そのことが、生活レベルを上げるということ。』(深澤氏の近著『デザインの輪郭』より)

一方で、こんなにもあえて「ふつう」を目指そうということ自体に違和感を覚える人もいるかもしれない。
しかしこの試みは、決して、「ふつう」を目指すデザインの概念を見せようとするものではない。彼らのデザインは、あくまでも道具作りに徹しようとする。そして、徹することで浮かび上がる、「ふつう」が形になったものこそが、人々の日常の記憶の断片でもあると言えるのだ。

Rei Kagami

Rei Kagami

Full time art lover. Regular gallery goer and art geek. On-demand guided art tour & art market report. アートラバー/アートオタク。オンデマンド・アートガイド&アートマーケットレポートもやっています。