ART BOOKS FOR YOUR Sweetheart! (1)

art map 連動企画のブックレビュー

In 特集記事 by Makoto Hashimoto 2008-12-30

art map 12-1月号でもご紹介しているTABライターによるブックレビューを2回に分けてお届けします!
(第2弾はこちらからご覧ください)

現代アートビジネス

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著:小山登美夫(アスキー・メディアワークス,2008)
数々の若手アーティストを発掘し、日本発の新しいマーケットを築いてきた小山登美夫が、複雑な現代アートの「価値」について分かりやすく解説している。プライマリーとセカンダリー、需要と供給によって異なる作品の「価格」の話など、広くは知られていない業界の仕組みになるほどと思わされる方は多いはず。トランクひとつで海外のアートフェアに乗り込んだなど、学生時代にアートに目覚めてから、苦労しながらも自らのスタイルでギャラリーを築きあげるまでのエピソード、奈良美智や村上隆といった日本を代表するようになったアーティストとの仕事についても、アートシーンの変遷と共に語られており興味深く読むことができる。タイトルから想像できる通り、商業的側面からのアートの価値について語られつつも、最終的には純粋にアートを思う心がシーンを支えるという信念には共感を覚えずにはいられない。アートに関わる職業に就いてみたい方、アートファンにとって必読の1冊。[橋本]

THE POWER OF JAPANESE CONTEMPORARY ART

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著:山口裕美(アスキー,2008)
「現代アートのチアリーダー」として、多様なアートプロデュース活動を行う山口裕美が、加藤泉、鴻池朋子、名和晃平、パラモデルなど注目する若手から中堅のアーティスト32組を豊富なビジュアルと共に紹介している、ボリューム感のある1冊。見開き2ページに渡って各アーティストの図版が大きく掲載された構成でページをめくっていくだけでも目に楽しいが、巻末では様々なかたちでそれぞれのアーティストと関わってきた彼女ならでの視点で作品、そしてアーティスト自身の魅力が語られており読みごたえも十分。これらは月刊雑誌『MACPOWER』に連載され好評を得たものをまとめたものだが、新たに天明屋尚へのインタビューや、山口による最先端のアートシーンを総覧した書き下ろしのテキストも収録。日本の現代アートが各国の展覧会やオークションを賑わせる中で、注目すべき本物のアーティストを知ることができる1冊だと言えるでしょう。しかも、全編、日英バイリンガル![橋本]

現代アートナナメ読み 今日から使える入門書

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著:暮沢 剛巳(東京書籍,2008)
副題の「今日から使える入門書」とあるように、ここ数年の日本の現代美術の周辺環境に興味のある人たちへの広い入門書。これを読んだらすぐに作品の理解度が増す!とまでは言えないが、パーティー等での会話には困らないし、少し「通」ぶることができる。押えておきたい人物や美術館が一覧になっていてどのページからでも読めるのも特長。全体が読みやすい文体で書かれており、固有名詞には注釈も多くついているなど、アート業界に親しみのない人でもすぐに理解できるよう工夫されている。装丁面から見ても注釈が文章のすぐ下に記入されている、文字の大きさやページ番号の振り方、フォントの使い分けに細やかな配慮がされているなど手軽に読むサポートをしてくれる。ただ作品理解についての事柄は少なく、「ナナメ読み」より「ドーナツ読み」のようで、コーヒーとドーナツでサクッと読める手ごろな一冊。本文に「地方の美術館にも行ってみたい。」と思わせる良い内容が多かったのに「お勧め美術館」の半分以上が東京の美術館なのは、いただけない。[ユミソン]

今日の限界芸術

著:福住廉(BankART1929, 2008)
思想家、鶴見俊輔が記した「芸術限界論」では著述時の純粋芸術と大衆(民衆)芸術どちらにも属さずプロという分野のない、手紙や落書き大衆歌といった文化表現形態を扱うことで、日常と芸術の接合を打ちたてようとした。福住による本書は、社会背景が違えど、これを今日に大筋焼きなおしたものである。この本で登場する「限界」というフレーズは、必ずしも「物事の限り」として用いられているのではない。おそらくは「余白」という意味で解するのが善いだろう。その「余白」には、ガムテープで表現活動を行う警備員、街頭に「貼り付け漫画」を展開する二人組やアート界隈に戯れずして黙々と自発的に表現活動を続ける人々が含まれている。そうした「余白」において、作家と批評家、鑑賞者という厳密な区分はなく何時でも交代可能であり、また誰しもがそうなり得ることを作品評という形で理論構築し、読者にその手法を自らの文筆によって提示しているのである。読了後生じる疑問は、なぜ福住が「美術」という文脈にこだわるかということである。「純粋芸術」と「大衆芸術」の周縁に位置するするのであれば、様々な表現ジャンルが溶解する今日において、もはや「芸術」という枠組みさえも揺さぶっているはずである。その回答は、この著作以降における彼自身の執筆や活動に顕現されるであろう。[鈴木]

芸術の体系[新訳]

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著:アラン(光文社,2008)
フランスの哲学者アランによる「諸芸術の体系」の新訳が、「芸術の体系」として出版。「体系」といっても、年表や参考図書、作家や作品のデータベースのようなものは出てこない。そもそも全体に時系列がない。「芸術とはどういうモノやコトなのか」という著者の理論を、ダンス・音楽・彫刻・絵画・建築・散文などのカテゴリーごとに分けて思考を進め、それを「体系」としている。その中でも「雄弁」を芸術として取り扱っているのは、東洋人の私たちには理解しがたいと共に興味深い。決してスラスラと理解できる内容ではないが、文体の読みやすさと理解しやすいように工夫された翻訳は、この本に馴染む人たちの層を大きく広げている。そして著者の論の進め方はとても丁寧で真摯で、章ごとに完結しており、どの章からでも読み始められる容易さがある。これから芸術を目指す人や、鑑賞者として親しんでいる人にもオススメですが、すでに芸術に深く関わっている人も、今更と言わずにトライして欲しい一冊。[ユミソン]

ART BOOKS FOR YOUR Sweetheart! (2)

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto. 1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「東京アートポイント計画」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「Tokyo Art Research Lab」事務局長/コーディネーター。 主な企画に都市との対話(BankART Studio NYK/2007)、The House「気配の部屋」(日本ホームズ住宅展示場/2008)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 [ブログ] ≫ 他の記事

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