公開日:2010年1月15日

水と土の芸術祭2009

新潟の歴史や風景を生かした芸術祭をレポート

第4回目を迎えて大きな盛り上がりを見せた大地の芸術祭「越後妻有アートトリエンナーレ2009」が開催されるかたわら、同じ新潟県でもうひとつの芸術祭が産声をあげました。

日本一の水量と延長を持つ信濃川、日本最大級の水量と清流度を持つ阿賀野川を有する新潟市(2005年に広域合併)を舞台とした「水と土の芸術祭」です。

今でも市域の約4分の1が海抜ゼロメートル地帯であるというくらいに、人の手で水と土と戦い、寄り添いながら積み上げられてきた歴史や、その風景を活かした作品が多く見られた芸術祭をレポートします!

【水と土の芸術祭2009】
[会期] 2009年7月18日~12月27日
[会場] 新潟市全域726k㎡
[主催] 水と土の芸術祭実行委員会
[実行委員長] 篠田昭(新潟市長)
[ディレクター] 北川フラム(アートディレクター・新潟市美術企画監)
[URL] http://www.mizu-tsuchi.jp/

バスツアーにガイド役として登場した篠田昭新潟市長
バスツアーにガイド役として登場した篠田昭新潟市長
流暢な歴史解説などで新潟市観光・文化検定1級の腕を披露していました

クイビーン・オフラハラ《Fifteen Degrees South' (Tears of my Father)》
クイビーン・オフラハラ《Fifteen Degrees South' (Tears of my Father)》
80代の棟梁さんを先頭に、地域住民の手を借りつくりあげた作品。冬を越したら再び彼らの手で組み立てる計画があるとか。

河口龍夫《関係-蓮の屋敷》
河口龍夫《関係-蓮の屋敷》
新潟の豪商が大正時代に建てた近代和風建築「旧齋藤家・夏の別邸」の趣きある空間を生かしたインスタレーション

美しい庭園空間にも作品が展開されていました

のぞきからくり
のぞきからくり
新潟市美術館では全国で3台のみが残るという貴重な文化財も公開。大正年間を中心に、明治から昭和初期にかけてこのようなからくり仕掛けの見世が一般大衆に親しまれたそう。

お金を払った人だけが、のぞき穴からしかけを見ることができます。

有形民俗文化財「篠原幸三郎家住宅」
有形民俗文化財「篠原幸三郎家住宅」
海岸浸食現象などにより消滅した角海浜集落にあったという典型的な中流古民家でも作品展示が

アン・グラハム《Shinohara's House》
アン・グラハム《Shinohara's House》
砂を注ぐとかつての海岸で聞くことができたという「鳴き砂」を想起させる音が鳴り響くインスタレーション

南川祐輝《おひるねハウス》
南川祐輝《おひるねハウス》

筆者が訪れた12月は、作品の中から荒々しい冬の日本海が見えました

新川 - 西川立体交差
新川 - 西川立体交差
新潟に3箇所あるという川の立体交差。ジャン・リュック・ヴィルムートの作品が展示されていました。

北川貴好《物質/水/自然が再生し繋がっていく土地》
北川貴好《物質/水/自然が再生し繋がっていく土地》
古タイヤや空き缶により、不思議な人工の丘を出現させた作品。この日はケータリングのカフェとパフォーマンスが行われていました。

大根を抱えつつ、天野光太郎のギターに合わせて踊る竹内みき

みずっちたんく
みずっちたんく
旧浄水場を活用したサポーターの活動拠点

1階にはサポーターらの手により集められたたくさんの作品素材や活動の写真ドキュメントなどがさりげなく保管&展示されていました

岸本真之《つぎつぎきんつぎ》
岸本真之《つぎつぎきんつぎ》
各家庭から回収した不要になった茶碗や湯のみを素材を「金継(きんつぎ)」によりつないで構成したインスタレーション作品

つぎのは
つぎのは
作品の半材をつないでつくられた小舟のようにも見える箸置き。サポーターの手により制作され、売上はサポーターの活動費になっているそうです。

王文志《Water Front-在水一方》
王文志《Water Front-在水一方》
通称「バンブーハウス」として市民に親しまれた作品。10月の台風18号で倒壊するも、精力的な募金活動やのべ150人のサポーターの手による再建作業により復活。

内部の様子

第1回の芸術祭とのことでしたが、新潟全域に点在する作品を見てまわることで、各エリアの風景や文化資源などを楽しみながらめぐることのできるよう、工夫されていたように思います。

サポーターの活動や、作品が設置された地元での受け入れ状況などもよいエピソードが見聞きできました。

12月末の時点でパスポート販売27,000枚、有料施設の入場者数が12万人、無料の屋外アート作品への動員は27万人と数字的にも目標以上の成果があったそうです。

新潟市美術館での展示は1月末まで行われているほか、一部作品は恒久設置も視野に入れ残されたり、再公開が検討されているそうです。

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto

1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「<a href="http://www.bh-project.jp/artpoint/">東京アートポイント計画</a>」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「<a href="http://tarl.jp">Tokyo Art Research Lab</a>」事務局長/コーディネーター。 主な企画に<a href="http://diacity.net/">都市との対話</a>(BankART Studio NYK/2007)、<a href="http://thehouse.exblog.jp/">The House「気配の部屋」</a>(日本ホームズ住宅展示場/2008)、<a href="http://creativeaction.jp/">KOTOBUKIクリエイティブアクション</a>(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 <a href="http://www.art-it.asia/u/hashimon/">[ブログ]</a>