公開日:2012年8月8日

イベントレポート「TAB Talks 学生編」

未来を担う学生達による熱いプレゼンの様子を報告します!

6月3日、Tokot Art Beatはアートプロジェクトや作品に携わっている学生同士の交流イベントとして、「TAB Talks 学生編」を行いました。この企画は、TABのインターンで同じく学生の河野の案に始まったもので、まさに学生による学生のためのイベントとして、エネルギッシュな会となりました。

今回のキーワードは「社会 x アート・デザイン」。構想段階のものから既に実施されたものまで、「社会」と関わりの深いプロジェクトや作品制作について、10組の学生プレゼンターによる3分間のプレゼンテーションを通して、参加者と共に意見を交わしました。また、コメンテーターとして、アートプロデューサーの橋本 誠さん、エディター・ライターのモリジュンヤさん、建築家の西村 浩さんをお迎えし、学生では気づきにくいことや改善点等を、プロフェッショナルの視点からご意見をいただきました。



電車や学校など、日常生活に注目が集まる

学生プレゼンター達の意識は多方面に渡っていました。日本と海外の美大の合同卒展など、海外を視野に入れた企画がいくつかある一方で、山手線の車窓の風景をアートで彩る案や、高校を巡回する移動式ギャラリーのように、電車や学校を舞台としたものや、ひたちなか海浜鉄道湊線沿線で駅名標のリデザインなどのプロジェクトを行うみなとメディアミュージアム、相模原市と連携して美大生と地域をつなげるワークショップや交流イベント企画を行うさがっとといった、地域密着型の活動を紹介する学生もいました。

「アートは難しいことだとは思っていない。ラブレターを渡すように社会と関わることができたらいい」と語った野瀬怜奈さんは、多摩美術大学の2年生。今年の春、「希望と不安を胸にやってくる新入生をたくさんの愛情で歓迎したい」という想いから、「たま美」という女の子に履修相談等を出来るTwitterアカウント(@tamami_2012)を開設し、メッセージとともに手製のラブレターを新入生に向けて配りました。当日のプレゼンではその時のラブレターを再現し、オーディエンスやコメンテーターに手渡す場面もあり、会場は大いに盛り上がりました!

左から西村浩さん、モリジュンヤさん、橋本誠さん
左から西村浩さん、モリジュンヤさん、橋本誠さん



アート・デザインを学ぶ学生以外の視点も

参加者が美大生のみに限られていなかったのもこのイベントの特徴で、今回のプレゼンターのほとんどが美術以外の分野を学ぶ学生。教育や、政治経済など、様々な視点からアート・デザインが語られました。

例えば、聖マリアンナ医科大学の3年生の竹内直人さんは、身につけることが嬉しくなるファッショナブルな補聴器を例に、医療分野におけるデザインの可能性についてプレゼンしてくれました。「眼鏡をファッションとして用いるように、医療器具のイメージをデザインで変えたい」と考える竹内さんの想いは、オーディエンスの共感を呼びました。
また、慶応義塾大学の緒方周平さんは、「Creatty」というアーティストが作品集をウェブ上に作るためのサービスを発表してくれました。「アート × ウェブ」の発想で、YouTubeやPixivのように世界中で使われるようなプラットフォームを目指すこのプロジェクトは、すでに企業からのサポートを受けながら、実現しつつあるようです。

質疑応答では様々な意見が飛び交いました
質疑応答では様々な意見が飛び交いました



キーポイントは、相手にメリットを仕込むことが出来るかどうか?

以上に挙げた発表の他にも、学生ならではの自由な発想が活きた提案が多く見られました。一方、今回の会では、学生では見落としがちな視点も浮き彫りになったようです。「大きなプロジェクトをするのには、スポンサーが必要。でも、ただ単にボランティアとして支援をしてもらうのでは、相手は動かないし、長続きしない。大きなキーポイントとなるのは、相手にメリットを仕込むことが出来るかどうかだよ。」と西村さんが仰ったように、学生が大きなプロジェクトを成功に導く為には、少し背伸びをして視野を広げることが必要なようですね。



「プロジェクトの実現のためにはもっと考えなくてはいけないと思った」(プレゼンター)、「最近発足したプロジェクトを進めるヒントを得られた」(オーディエンス)、「アートやデザインは、違うこととコラボレーションした時、より輝くのだと知った」(オーディエンス)など、当日のアンケートからもうかがえるように、参加者の方は今回の交流を通して多くの刺激を受けたようです。また、「同じ目的を持つ仲間と出会い、次回会う約束ができた」という声も少なからず聞かれたことは、主催者にとって一番の喜びでした。

構想だけに留まらず、ぜひ実現してアート・デザイン界に新たな風を吹き込んでくれることを楽しみにしています!

参加者のみなさん、ありがとうございました!

一生懸命メモを取るオーディエンスの皆さん
一生懸命メモを取るオーディエンスの皆さん



会場提供:KREI/co-lab 西麻布

[TABインターン]
【企画】河野絵美佳: 木工芸を学ぶ美大生。作品制作を通して人の営みとしてのアートやデザインに興味を持つ。特に日本の伝統的なデザインに惹かれ、わっぱのお弁当箱を愛用中。
【写真】鈴木孝史:東京都出身。大学卒業後、システムエンジニアとして働いていた時にアートと出会い、現在は展覧会のキュレーションに関わるなど幅広く勉強中。また自身も写真作家として活動している。 http://www.takashi-suzuki.com
【執筆】Ai Kiyabu: 89年生まれ。美学を専攻する大学生。編集者目指して、雑誌「GINZA」でアルバイト中。Sputniko!展にスタッフとして参加後、アートと社会の関わりに興味を抱く。趣味はアウトドア。バッグ一つで生きていける人生を模索中。

TABインターン

TABインターン

学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。