第5回目を迎える、映像とアートの国際フェスティバル・恵比寿映像祭が東京都写真美術館で開幕した。国内外から集結する多彩な作品やプログラムを通して映像表現のいまを問う本フェスティバル。今回は「パブリック⇄ダイアリー」をテーマに、公と私の境を往復する「日記」のあり方を問いかける。
——旧来、日記は私的な空間で主観的に記すもの、とされてきましたが、メディア技術や情報システムの変転によって私的な空間がさまざまな形で浸食され、管理されうる現代にあって、「私」を問うことは、裏返しに「公」をもまた問うことにほかなりません。映像の力によって、「私」が「歴史」になり、「公」が「日記」として読まれるような、揺らぎにも似た領域に、光をあててみたいと思います。(開催主旨より)
公私の境界を行き来する「日記」というキーワードから、様々な作品が集結した展覧会。オフサイト会場である恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場には、鈴木康広の巨大インスタレーション《記憶をめくる人》が展開中だ。今回のテーマにちなんで制作された本作では、作家のアイデアや膨大なイマジネーションが綴られたノートが巨大な立体物として出現。作家の10年近くに及ぶ私的なスケッチが1ページずつひらかれていく光景は、正にプライベートとパブリックを行き来する空間そのものだ。
そのほか、期間中は様々な上映、トーク、パフォーマンスのプログラムも組まれている。また、恵比寿界隈のギャラリーなどで地域連携プログラムが今年も開催している。横尾忠則や、ICCでも展示している毛利悠子、Perfumeのミュージックビデオも制作した土屋貴史(TAKCOM)など盛りだくさん、ぜひこの機会をお見逃しなく。
■関連情報
第5回 恵比寿映像祭 公式ウェブサイト
TABlog:第5回恵比寿映像祭『パブリック⇄ダイアリー』揺らぐパブリックと個の境界線——新しいかたちの「日記」をとおして、みえてくるものとは?
執筆:塚田有那