公開日:2013年3月6日

村上隆、初メガホン作品『めめめのくらげ』のフッテージ上映会に登場

【Art Beat News】“『ロード・オブ・ザ・リング』を創るんだぐらいの妄想がふくらんでいた” そうです。

2月15日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで、アーティスト・村上隆氏の初メガホン作品となる、映画『めめめのくらげ』のフッテージ映像の上映会が、取材報道陣向けに開催された。

上映会に登場した村上隆氏

『めめめのくらげ』は、主人公の小学生 正志と、彼が名付けたくらげの様な不思議な生き物「くらげ坊」のストーリー。正志がくらげ坊を連れて転校先の学校に行くと、他の生徒も大人には見えない不思議な生物=「ふれんど」を連れていたという設定で物語は始まる。

村上隆氏は、本作で初めて映画監督としてメガホンを取った。『めめめ〜』は震災後の日本を舞台に、実写とCGを融合しファンタジーの世界を描き出すジュブナイル作品で、CGカットだけで1000カット以上という、今までの日本映画にはないスケールでも注目を集めている。鶴田真由など実力派女優もキャストに名を連ねる。

上映会には村上隆氏も登場し、自身初となる映画作品への思いや今後の展望を語った。以下、上映会でのインタビューの模様。

自身初となる映画作品への思いや今後の展望を語る村上氏

Q.これまでアートの世界で活躍されてきた村上さんが、今回映画を撮られるにいたった理由をお教えいただけますか。

自分のエッセンスは60~70代のサブカルチャーを背景に作っていますので、そういったエッセンスを共有できるような媒体として映画を模索していました。最初はアニメーションで作ろうと思いましたが、映画という文法が理解できなく、情報量が多い実写で試してみようとしましたが、逆に苦労しています。

Q.「くらげ坊」などのキャラクターに込めた意味を教えてください。

コミュニケーションをするための媒介者として、異次元からやってきたという設定においてどのようにすれば子供たちにリアリティをもって伝えられるかを考えました。子供の感情、親や社会へのフラストーレーションを感じると出てくるという設定で作りました。

Q.これまでの作品として、ポップなイラストのイメージの多い村上隆さんですが、今回アニメではなく、なぜ実写だったのでしょか?

そもそも10年前に群馬県にブラジル労働者が移民してきているという話を聞きました。文化の衝突、文化の融合が日本をテーマに描けるのではと思い、シナリオを書き始めました。自分もアメリカに行って文化の衝突の中から新しいものができてくるという経験があり、そのようなものができると思ったのですが、きっかけや動機付けが薄かったんです。
その後、震災を契機に大変なことではありましたが、戦後の文化そのもののゆがみがくっきり見えるようになり、書くべきテーマは“同じ日本人なのにコミュニケーションが行き届いていないのではないか”というところにはっきりと亀裂が見えたので、今生きてる日本人をスクリーンの中で動かすことがリアルだと思い、実写にしました。
また、アニメーションにはできないリアリズム、日本のリアルを追求しようと思って作りました。

映画宣伝用ポスター

Q.映画の現場と言うのは、これまでとは全く畑の違った現場だと思うのですが、ご苦労された点はありますか?どんな部分だったのでしょう?

自分は邦画も洋画も隔てなく見ています。特に、宇宙戦艦ヤマト世代なので、メカニックデザインやクリーチャーのデザイン、造形などはオタクレベルまで目が肥えています。それを追求するにはなかなか邦画業界は難しかったんです。何度もスクラッチビルドを繰り返さなくてはいけなくて製作が遅れてしまいました。それは、現場と僕のイメージが隔たっていて、その穴を埋めていくのが大変でした。自分は『ロード・オブ・ザ・リング』を創るんだぐらいの妄想がふくらんでいたので、「ピーター・ジャクソンはこんなこと言ってません!予算は違うけどスピリットは同じです!」とか訳の分からないことを言っていて、現場を困らせましたね(笑)しかし、何度もやり直してきた結果、自信をもってお届けできるものになっています。

Q.現場では力を吸い取られてしまったとお伺いしましたが。

僕は宮崎駿監督が大好きで、『もののけ姫』のメイキングは何百回も見ています。宮崎さんは1作品終えると1年休憩されるとおっしゃっていて、休憩するのかよ!と思っていましたが、毎日本作の編集をしていると、実際にフィクションの世界に引っ張られていく体験をして、本当に1年休憩しないと戻ってこれないんだなと思いました。

Q.今回の主題歌のKZさん、初音ミクの声などとても印象深いのですが、起用の理由をお教えいただけますか。

KZさんは以前からDJを頼んだりと付き合いがありました。初音ミクは今や日本を代表するサブカルチャーのアイコンです。日本の映画ではありますが、日本以外の国にも観てほしい。つまり日本の代表的なアイコンを次から次へと合体していきたいという想いがあり起用しました。

Q.続編との連動や今後の展望は?

パート3までは映画で作ります。チャンスがあればテレビシリーズなど10年間でこのタイトルは続けていこうと思っています。2は撮影は撮り終わっていますが、これからポストプロダクションでやり直しし、年内に完成、年明けには公開したいと思って進めています。

映画『めめめのくらげ』
2013年4月26日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他 全国順次ロードショー
©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.


■ストーリー
主人公の小学生、正志(まさし)は、引っ越してきた新しい家に、見慣れない段ボールを見つけた。中から出てきたのはくらげの様な不思議な生き物。どこか愛くるしいその生き物を“くらげ坊”と名付け、次第に仲良くなっていく。リュックにくらげ坊を連れて転校先の学校に行くと、他の生徒も、大人には見えない不思議な生物=“ふれんど”を連れていた。いったい誰が何のために。そしてふれんどとは何なのか―。

原案・監督・キャラクターデザイン:村上隆
出演:末岡拓人、浅見姫香、窪田正孝、染谷将太、黒沢あすか、津田寛治、鶴田真由、斎藤工
配給:ギャガ
制作:カイカイキキ

執筆:岡徳之(tadashiku

Art Beat News

Art Beat News

Art Beat Newsでは、アート・デザインにまつわる国内外の重要なニュースをお伝えしていきます。