公開日:2014年10月10日

夏ミューぽんでアートの旅に出かけよう!(青森編その3)

青森編最終回!十和田のまちなかアートめぐり

Tokyo Art Beatによる美術館・アートイベントの割引アプリ、ミューぽん。現在ミューぽんが北は青森から南は鹿児島まで、全国に拡大しているのをご存知ですか?ふだんは都内や都内近郊の美術館にしか行かない方も、遠方の美術館に足を伸ばせるチャンスです。ミューぽんでお得にアートの旅に出かけてみましょう。

3回にわたってお届けしてきた青森編も今回が最終回!最後は十和田市街地のまちなかアートで締めくくります。

▼過去の記事はこちらから!
青森県立美術館「美少女の美術史展」 その1
十和田市現代美術館「そらいろユートピア」展 その2
十和田市現代美術館は、アートによるまちづくりプロジェクト、Arts Towadaの拠点施設として2008年に開館しました。開館以来、「まちなかアート」として、商店街の空き店舗や実際に使っている店舗に作品を展示したり、ボランティアによるまちなか作品ツアーなどが行われてます。今回の「そらいろユートピア」展でも、まちの中に作品が展示されているということで、商店街を探検してきました。

美術館から出て三本木大通り(旧国道4号)沿いを歩いていると、道横に日高恵理香≪商店街の雲≫を見つけました。雲の形をした銀色の網目状のオブジェは、ベンチとして利用できます。道沿いに点在する、白色のツルンとした花壇や花瓶は、近藤哲雄≪pot≫という作品。この2つは今年の3月に完成し、まちの新しいアートファニチャーとして商店街を彩っています。

日高さんと近藤さんの作品がある道の反対側には、「中央商店街」という何やら不思議な小路がありました。
薄暗い通路を奥に進んでいくと、カラフルに光る看板がみえてきました。煌々ときらめくネオンは、寂れたシャッタ―街に異様な雰囲気を放っています。しかしまた、奥の天窓から差し込む光と相まって、看板は教会のステンドグラスのような荘厳さも感じます。
これは中崎透さんの≪看板屋なかざき≫という作品です。この作品では、商店街の人たちからオリジナル看板の依頼を募り、依頼主(商店街の人たち)のコンセプトをもとに中崎さんが看板を制作しました。看板は100円で制作してもらえるのですが、そのデザインは中崎さんにゆだねられており、依頼主のイメージ通りに出来上がるとは限りません。美術館内のカフェには、中崎さんと依頼主の契約書が展示されており、その過程をみることができます。資本主義におけるビジネスシステムや、その契約関係における通例といったものをズラしていく狙いがあるようです。

次にアート好きな店主さんがいるとお聞きしてやってきたのが、「松本茶舗」さんです。
昔ながらの陶器やお茶を扱うお店。「どこに作品があるのだろう?」とキョロキョロしていると、店主の松本さんが現れ、「作品だったら地下にあるよ。」と教えてくれました。店の奥に進むと、なんとそこには地下室が!木のはしごをゆっくりと降りていくと、山本高之さんの作品が展示されていました。7月21日に開催されたワークショップ、≪あたらしいわざをつくろう!≫の記録映像です。柔道着や剣道着をきた十和田のこどもたちが、自分オリジナルの「わざ」を考え、披露しています。お店の松本さんにお話しを伺いました。

―なぜお店に地下室があるのですか?
1941年に大きな火事があって、この商店街一帯は焼けてしまったのです。地形上、十和田は風が強く、たびたび火災を繰り返していたんですね。そのような理由で、火災から財貨を守るために地下室を設ける家がありました。しかし、今も残っているうちはそう多くありません。戦時中は防空壕として機能していましたが、戦後は排水ができない関係で、水がたまったまま閉鎖。そのまま数十年間使用していませんでした。美術館ができたとき、その歴史を話したら、地下室を使ってなにか作品を展示できないかということになって。

―山本さんの映像の手前にあった、岩のようなオブジェが気になりました。
それは、栗林隆さんのインスタレーション《インゼルン・チャホ》という作品です。二年前の「栗林隆WATER >|< WASSER」展(2012年)の時につくられたもの。実は地下室に50㎝ほどの水を張ると、日本列島が浮かび上がってくるんですよ。水がないと、一体何かわからないでしょ?私たちの住んでいる日本という島は、元々は大きな山の連なりなんですよね。栗林さんは私たちが当たり前と思っている世界と、隠れている非日常との境界を捉えなおす作家さんです。そういう視点で考えれば、このような普通の茶碗屋にアートがあるというのも、日常性と非日常性の境界ですよね。 ―日常性と非日常の転換点としてアートが機能するということですね。逆に、アートは日常空間から引き出されるという見方もできますね。
以前、チェ・ジョンファさんという韓国のアーティストが滞在したときに、うちの店で展示をしました。その作品が、大量のサトちゃん(薬局の店前にある、ゾウのキャラクター)を集めて置くというものでした。韓国人のジョンファさんにサトちゃん人形はそれほど衝撃的だったみたいです。わたしたちにとっての日常は彼にとっての非日常だった。それを見た地元の子どもたちは、「これが作品なの?」と首をかしげていました。「アート」や「作品」の概念について考えるきっかけになったはずです。ジョンファさんは、子ども達と何回かワークショップをしていたり、まちの人々と交流を深めていました。十和田市現代美術館では、そういったアーティストとまちの人とのコミュニケーションを大事にしています。
―アーティストと地元の人々との交流など、美術館がまちに変化を与えたのでしょうか。
そりゃもう、全然違いますよ。それまで商店街を歩いているのは、病院に向かうおばあちゃんくらいしかいなかった。それが、綺麗な色の服を着た若い女の子たちが通りを歩いているのを見かけるわけです。見ての通り、田舎の古い商店街。外見が変わって新しくなったり、またものすごく栄えたりするようになったわけではないけれど。それでも、今までであれば絶対に来ないような人たちがアートを通じてまちに遊びに来てくれる。私の店にもね(笑)。それはとても素晴らしいことだと思います。

松本さんはアートにとても詳しく、誰にでも気さくに接してくれる方でした。十和田にお越しの際は、ぜひこちらのお店に寄ってみてください。十和田のまちでは、アーティストとまちの人との交流、そして、訪れた人たちとまちの人との交流をつなぐきっかけとして、美術館やアートが機能していることを実感しました。


「そらいろユートピア」展最終日の9月23日には、フェスティバル十和田!〜三本木ナイト〜が開催されます。
フェスティバル十和田とは、アーティストと参加者が入り交じりながら、地域の伝統的な盆踊りである三本木小唄をアレンジし、演奏して踊って楽しむお祭りです。今回は音楽部部長に大友良英さんを迎え、美術部部長・奈良美智さん、美術部副部長・中崎透さん、顧問・藤浩志さんほか大勢のアーティストも参加します。

ゆったりとした時間が流れ、地元の人々があたたかく迎えてくれるまち、十和田。
秋の連休のおでかけにもぴったりです。ぜひフェスティバル十和田に合わせて足をのばしてみてくださいね。

▼割引アプリ「ミューぽん」でお得に楽しもう!
「そらいろユートピア」展はミューぽんで100円引きになります。(2名様まで有効)
ミューぽんをお供に芸術の秋を満喫しよう!

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[TABインターン] 吉村真里奈: 西洋近代美術を専攻する学生。美術館やギャラリーを巡るうちに、学校では学ぶことができない「今起きている」アートに関心をもつようになる。休日は吉祥寺ArtCenterOngoingのお手伝い。好物はグミ。

TABインターン

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学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。