公開日:2016年1月30日

はじめての現代アート in「村上隆の五百羅漢図展」

美術館にあまり行ったことのない人と一緒に村上隆の世界を覗いてみよう!

美術作品を見るのは、日本史や世界史の教科書の中だけ?古典的な絵画や工芸品だけ?今の時代にも面白いアートがたくさん生まれているのに知らないのはもったいない!「現代アートってなんだろう?」という人にも現代アートを楽しんでほしいと思い、普段は美術館に足を運ばない方の美術館鑑賞に密着させてもらいました。

ハードコアミュージックをこよなく愛し、文教大学で臨床心理を専攻しているなづきさんと、日本獣医生命科学大学で畜産を学び、4歳からバレエを続けるバレリーナのかおりさん。この二人が、森美術館で開催中の「村上隆の五百羅漢図展」を鑑賞します。村上隆なんて知っていて当たり前?しかし、二人はこの名前を聞いてもハテナマーク。そんなアートについては初心者の二人が作品に触れたらどんな反応を示すのでしょうか!

村上隆はロサンゼルス現代美術館での大規模な展覧会を初めとし、ヴェルサイユ宮殿での展示やルイ・ヴィトンとのコラボレーションなど精力的な活動を行っている日本を代表する現代美術家の一人です。「村上隆の五百羅漢図展」は、日本では14年ぶりとなる村上隆の大規模展覧会で、見どころのひとつは中国の古代思想で東西南北を司る四神(青竜、白虎、朱雀、玄武)の名を冠した4面で構成される、全長100メートルに及ぶ《五百羅漢図》の公開でしょう。

会場に入って展覧会の冒頭にある説明文に目を向けた後は、色鮮やかな作品へと目が映ります。はじめに見た作品は《宇宙の深層部の森に蠢く生命の図》でした。そこで、なづきさんが「これ、あの花がニコニコしているゆずのCDジャケット描いた人?」と、気がついたようです。村上隆本人については知らないつもりでも、作品にはいつの間にか触れていたことに驚いていました。作品を複数見ると「これは手で描いているの?パソコンとかで描いてるのかな。」とシンプルな疑問がたくさん浮かんできたようです。

《宇宙の深層部の森に蠢く生命の図》(部分) 2015年 ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

大きなサイズのものが多い本展の作品群ですが、鑑賞者は隅々まで目を通して自分のお気に入りの人やキャラクターを見つけることが楽しいようで、パシャパシャと写真を撮影しました。そして「かわいい」を連発。この「かわいい」現象は展覧会最後まで続きます。離れて、絵画の全体像を見ることなく、小さな自分のお気に入りを探すことに夢中。
こちらの《南無八幡大菩薩》、真っ白いキャンバスに黒線の丸が描かれているだけの絵に見えますが、よくよく見ると、白地にはドクロがたくさん敷詰まっていることがわかります。まじまじと見つめ「すごい!」感嘆していました。絵画を遠くから眺めているだけでは気がつきませんね!

《Reborn》2012年 ©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
つられて真似をしています
つられて真似をしています

こちらの作品の前では思わずくすりとし、真似をし始めました。「脱皮しているね、でも脱皮した後も大して変わらないな。生まれ変わったのかな?これは作り物?目玉が怖い。」との感想。一見ユーモラスな作品もよくよく考えると不思議で、怖いものに思えてきたようです。そして、彼がこの展覧会の作家だとは気づいてはいません!

《Superflat DOB:叫び》2015年 ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

こちらの《Superflat DOB:叫び》を見て「ニューロンみたいだね。」とかおりさん。画面上にまるで意思を持つかのように現れる変幻自在なDOB君を、神経細胞のようだと感じ取る理系女子!今回の展覧会は、《五百羅漢図》だけでなく「727」や「たんたん坊」といった代表的シリーズの最新作や、大型彫刻も充実して見られるのは嬉しいですね。

こちらは研究資料やスケッチ、作品の下図や指示書などの資料が展示されている部屋。「綺麗なものを作る裏には、たくさん人が関わって、ちゃんとした過程があるね。」と見ています。200人を超えるスタッフと共に作り上げる制作プロセスの一端を見ることで、より作品に興味が湧きますね。

《五百羅漢図 [玄武]》(部分) 2012年 ©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

絵画の説明文内で、「シシ神」を発見。実際にこちらの霊獣は、『もののけ姫』の「シシ神」が発想源となっているそうです。そして、最後の部屋では100メートルに及ぶ絵画《五百羅漢図》の4つのパートのうち[玄武]と[朱雀]のパートが登場します。通常、玄武は亀と蛇が合体した姿で表されますが、この画中ではその姿は描かれておらず、中央の霊山とその右側の霊獣・蜃(しん)が、それぞれ亀と蛇のイメージの代わりになっています。

《五百羅漢図》(部分) 2012年 ©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

長い絵画を撮影するためにパノラマ写真がちょうど良いことに気がつき、早速試してみます。普通の写真で納めるとなると絵画との距離が必要なのですが、そこまでの広さはないので、パノラマ写真は最適ですね!

最後に二人に感想をもらいました。「ダンスでもコンテンポラリーがあるけれど、現代アートも同じであまり理解できない。だけど、見るだけで楽しむことは可能だということを認識できてよかった。展覧会で写真を撮れることが、新鮮で誰かに見せて話したくなる!」と楽しんでくれたかおりさん。「ゆずのCDジャケットのイメージでハッピーな印象だったけど、ダークな面もあって面白かった。今後も村上さんがどんな作品を作るのか気になる。」と、今後の作家活動にも注目してくれるなづきさん。分からなくても、理解できなくても感じることがある。それだけで現代アートは十分に楽しめるのだと、今回の同行で感じました!

《五百羅漢図》をはじめ、制作過程の資料や映像、村上隆の作品と彼に影響を与えた江戸時代の絵師による作品の同時展示等、アート好きなあなたも見応えある「村上隆の五百羅漢図展」でした。写真撮影もOKということなので、みんなで村上隆の世界をSNSを使って拡散しましょう!

村上隆の五百羅漢図展 公式ホームページ

[TABインターン] 佐久間こころ: 美大で学芸員資格を取得するために日々奮闘中。東京には素敵なスペースがたくさんあるので、TAB内に載っているスペースを全制覇することが目標です!

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