公開日:2018年1月11日

150年前に起きた“復興の失敗”とは? カオス*ラウンジ新芸術祭2017市街劇「百五〇年の孤独」開催中

福島県いわき市泉地区でのリサーチを市街劇として発表

今年で第3回目となるカオス*ラウンジ新芸術祭2017市街劇「百五〇年の孤独」が福島県いわき市南西部の泉地区で開催されている。開催期間は2017年12月28日(木)から2018年1月28日(日)まで。カオス*ラウンジ新芸術祭とは、アーティストグループのカオス*ラウンジ(合同会社カオスラ)が主催するリサーチ&アートプロジェクトであり、2015年の第1回目以降、福島県いわき市の各地を継続的に訪れて、美術史的、民俗学的、社会学的なリサーチを重ね、その成果を「芸術祭」として発表してきた。

荒渡巌《画像の一本松》2015年
カオス*ラウンジ新芸術祭2015 市街劇「怒りの日」出品作

今回の開催地であるいわき市南部の泉地区、旧泉藩は、幕末期から明治期に起きた廃仏毀釈がとりわけ激しかった地域であり、藩内のすべての寺院が打ち壊されるほどだったという。その後、復興した寺院はわずか2つ。本展キュレーターの黒瀬陽平によれば、泉地区は2011年以前に「復興の失敗」を経験した地域なのだという。カオス*ラウンジは、これを現在進行中の「復興」の行く末を考えるための貴重な先行事例と位置づけ、調査を実施。それらの成果を踏まえて、「復興の失敗」をテーマとした市街劇形式の展覧会を開催する。

梅沢和木《彼方クロニクル此方》2015年
カオス*ラウンジ新芸術祭2015 市街劇「怒りの日」出品作

山内祥太《アキレスは亀に追いつけない》2016年
カオス*ラウンジ新芸術祭2016 市街劇「地獄の門」出品作

「かつての“復興の失敗”は、現在の泉の街並みや風景にも、確かに影を落としている、ということだ。生者と死者の関係が変われば、街も変わる。150年の孤独のなかで、ゆっくりと変わっていく。そして、その街並みや風景は、今まさに被災地で進みつつある“復興計画”を、そこで新しく生まれている街並みや風景を、想起させずにおかない」(黒瀬)

KOURYOUとサイト制作チーム 《-キツネ事件簿- 探索、部屋、白狐、沼と星》2016年
カオス*ラウンジ新芸術祭2016 市街劇「地獄の門」出品作

約150年前に起きた廃仏毀釈と、復興の失敗。震災から8年近くを経て、今もなお答えが出ない復興や慰霊、鎮魂について、カオス*ラウンジの「芸術祭」はどのような回答を示すのだろうか。

■開催概要
主催:合同会社カオスラ
会場:zitti (〒971-8172 福島県いわき市泉玉露2丁目2-2)ほか、泉駅周辺の複数会場
開催期間:2017年12月28日(木)~2018年1月28日(日) ※1月からは金土日祝のみ
会場時間:10:00〜18:00
※本展は、JR常磐線・泉駅からすべての会場を徒歩でご覧いただけますが、会場間の移動に徒歩10分以上要する場合もあります。もしお車でお越しの際は、専用の駐車場はありませんので、ご注意下さい。
※全体の鑑賞時間の目安は3時間程度です。期間中の日の入り時間は16:30ごろです。屋外展示や移動が多いので、暗くなると鑑賞しにくい作品もあります。できるだけ早い時間にお越し下さい。
観覧料:1,000円(高校生以下は無料)
交通案内:JR常磐線・泉駅北口より徒歩2分
公式ウェブサイト:http://chaosxlounge.com/zz-izumi/jigoku.html
問い合わせ:info@chaosxlounge.com

キュレーション、演出:黒瀬陽平(美術家、美術批評家、カオス*ラウンジ代表)

参加アーティスト:荒木佑介、市川ヂュン、井戸博章、今井新、梅沢和木、梅田裕、ク渦群、酒井貴史、鈴木薫、名もなき実昌、パルコキノシタ、百頭たけし、藤城嘘、藤元明、柳本悠花、弓塲勇作、Houxo Que、KOURYOU、SIDECORE

リサーチチーム:黒瀬陽平、江尻浩二郎(郷土史研究、東日本国際大学非常勤講師)、亀山隆彦(仏教学、龍谷大学非常勤講師)、荒木佑介(アーティスト)

(Text: 玉田光史郎 Koushiro Tamada)

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