ヴァージル・アブローは1980年アメリカ・イリノイ州生まれのファッション・デザイナー。2013年にストリート・ブランド「Off-White」を立ち上げ、そのアイコニックなスタイルは瞬く間に世界的人気に。NIKE、IKEAといった企業ともコラボレーションをするほか、2019年にシカゴ現代美術館で個展「FIGURES OF SPEECH」を開催。ファッションにとどまらず、建築や音楽にも深い造詣をもつヴァージルは、縦横無尽な活動で各界を賑わせてきた。
18年にはルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターに就任したことも大きな話題を呼んだヴァージルが、20年2月16日まで表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で「COMING OF AGE」を開催中だ。
「COMING OF AGE」とは、ベテランから若手まで、ヴァージルが選抜した写真家の作品が集まるグループ展。19年1月にロサンゼルス「Little Big Man Gallery」での開催を皮切りに、一部ラインナップを変更しながら北京、ミュンヘンなどを巡回してきた。今回の東京展に参加する21名のその顔ぶれをチェックしていこう。
Ari Marcopoulos(アリ・マルコポロス)は1957年アムステルダム生まれ。アンディ・ウォーホルのスタジオでのモノクロ写真の印刷業務や、写真家のアーヴィング・ペンのスタジオ・アシスタントを務めたこともあるというマルコポロスが被写体としてきたのは、ニューヨークのヒップホップカルチャーとストリート。2019年1月にはファーガス・マカフリー 東京で個展を行なったことも記憶に新しい。
マルコポロスと同じくストリートを撮影し続けてきたのは、1972年ロサンゼルスに生まれ、いまも同地を拠点とするGregory Bojorquez(グレゴリー・ボホルケス)や、1996年ベルリン生まれのAbdul Kircher(アブドル・キルヒャー)。キルヒャーは、7歳で母とともにニューヨークに移住。10代の頃よりホームレスの人々を撮影し、近年は近しい友人や家族の姿をとらえている。ストリートのなかでも特にブラックカルチャーにフォーカスするのは、1979年スコットランド生まれのIvar Wigan(アイヴァー・ウィガン)だ。
Dennis McGrath(デニス・マグラス)、Ed Templeton(エド・テンプルトン)らスケートカルチャーに近接した作品を発表してきた写真家や、移民二世というアイデンディティとともに写真に向き合うSean Maung(ショーン・マウン)、Nick Sethi(ニック・セティ)など、各人を結ぶいくつかの共通項が見えてくるのも本展の特徴と言えるだろう。
また、ルイ・ヴィトンメンズウェアの広告でカメラマンを務めたMohamed Bourouissa(モハメド・ブーロイサ)、Raimond Wouda(ライモンド・ヴァウダ)、映像製作に関わったBAFIC(バフィック)、Sandy Kim(サンディ・キム)、Julian Klincewicz(ジュリアン・クリンスウィックス)をはじめ、ルイ・ヴィトンの仕事でヴァージルとチームを組んだメンバーも多数名を連ねている。
その他の参加作家は、Nick Waplington(ニック・ワプリントン)、Deanna Templeton(ディアナ・テンプルトン)、Jim Goldberg(ジム・ゴールドバーグ)、Niall O’Brien(ナイル・オブライエン)、Wendy Ewald(ウェンディ・エヴァルト)。日本からは星玄人(ほし・はると)、題府基之、荒木経惟の3名が参加している。
スクラップブックのように写真や映像が並ぶ壁面には作品の情報を記すキャプションがなく、そのバックグラウンドは作品そのものからのみ読み解くスタイルのこの展覧会。ヴァージルがタイトルで示す「COMING OF AGE(新たな時代の到来)」をチェックしてほしい。
■展示概要
タイトル:「COMING OF AGE」
会期:2019年12月11日(水) ~ 2020年2月16日(日)
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所:東京都渋谷区神宮前 5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F
電話番号:03-5766-1094
開館時間:12:00 〜 20:00
休館日:表参道店に準じる
ギャラリーウェブサイト:http://espacelouisvuittontokyo.com/
野路千晶(編集部)