公開日:2020年10月5日

海や山、駅舎もアートの舞台に。2020年に訪れたい芸術祭

北海道から広島まで、2020年に行われる芸術祭の中から編集部注目の芸術祭をピックアップ。

1年を通して日本各地で行われる芸術祭は、気候や土地の風土を生かしたその場かぎりの鑑賞体験も魅力。今回は、2020年に行われる芸術祭の中から編集部注目の芸術祭を厳選して紹介する。

※新型コロナウイルスの影響で一部芸術祭の会期を変更しています。
最新情報は公式サイトをご確認ください。

 
◎MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館(2020年10月17日〜11月15日)
今年初開催の「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」は世界遺産をはじめ、日本の始まりを象徴する風景が多く存在する奈良県の吉野町、天川村、曽爾村が舞台。この3つの地域をそれぞれ3〜5時間ほどかけ、自然に包まれながらアート作品を鑑賞・体験するというものだ。プロデューサーは齋藤精一、キュレーターは林曉甫が務め、参加アーティストは井口皓太、上野千蔵、oblaat、菊池宏子+林敬庸、木村充伯、毛原大樹、齋藤精一、坂本和之、佐野文彦、力石咲、中﨑透、西岡潔、ニシジマ・アツシ、細井美裕など。広大な土地を歩きながら鑑賞するため、1日ではなく複数泊での参加おすすめ。
https://mindtrail.okuyamato.jp/

会場風景(奈良県吉野町)撮影:西岡潔

 
◎梅田哲也 イン 別府(2020年12月12日〜2021年3月14日)
国際的に活躍する1組のアーティストを招聘し、地域性を活かしたアートプロジェクトを実現する個展形式の芸術祭「in BEPPU」。これまでにアーティストユニットの「目」、西野達、アニッシュ・カプーア、関口光太郎らが参加したこの芸術祭で、今年は梅田哲也が作品を発表する。梅田は展示空間や周囲の環境を取り込み、その場所にあるもので構成される光・音・動きを伴うインスタレーションや、そこにいる人たちとともにつくり上げるパフォーマンスを国内外で発表し、国際的に高く評価されてきた。今回の「in BEPPU」では、複数エリアを舞台に長期的に展開する回遊型のプロジェクトとして、会場や会期のあり方を柔軟にとらえ直し、新たな展覧会の形を模索するという。
https://inbeppu.com

梅田哲也『りんご』札幌国際芸術祭 2017(札幌市、2017年) 撮影:小牧寿里

 
◎さいたま国際芸術祭2020-Art Sightama-(2020年10月17日〜11月15日)
今年で2回目を迎える「さいたま国際芸術祭」のテーマは「花/flower」。蜂、鳥、蝶などの媒介者によって様々な場所に新しい景色をもたらしてきた花のように、国内外のアーティストがさいたまに新たな景色をつくり出す。ディレクターには映画監督の遠山昇司を迎え、ハプニング(身体芸術)の生みの親であるアラン・カプロー(1927-2006)、遠藤一郎、テリ・ワイフェンバック、灰原千晶、フランク・ブラジガンド、日本フィルハーモニー交響楽団、川井昭夫、詩人の最果タヒなど37組が参加する。
https://art-sightama.jp/

アラン・カプロー《Fluids》(1967:2005)、Art:36:Basel, Switzerland/Photo: Stefan Altenberger
アラン・カプロー《Fluids》(1967:2005)、Art:36:Basel, Switzerland/Photo: Stefan Altenberger
さいたま国際芸術祭2020-Art Sightama- 参考画像

 
◎ヨコハマトリエンナーレ2020(7月17日〜10月11日)
今年で20年目を迎える現代アートの国際展。今回は、ニューデリーのアーティスト3人組「ラクス・メディア・コレクティヴ」をアーティスティック・ディレクターとして迎え、「ソースの共有」と「エピソードからはじまるヨコハマトリエンナーレ2020」をテーマに開催する。現段階での参加アーティストは、アントン・ヴィドクル、エヴァ・ファブレガス、ファーミング・アーキテクツら日本初展示の作家、新井卓、飯山由貴、佐藤雅晴ら19組が決定。また、ラクスが提唱するコンセプトをベースに「エピソード」と称するプレイベントは2019年11月より継続的に行われている。
https://www.yokohamatriennale.jp/2020/

エヴァ・ファブレガス《Pumping》(2019)
エヴァ・ファブレガス《Pumping》(2019)
ヨコハマトリエンナーレ2020 参考画像

 
◎六甲ミーツ・アート 芸術散歩2020(2020年9月12日~11月23日)
明治維新後、神戸の居留外国人によってレジャーのために開発が行われた山である六甲山が舞台。今もなお多くの人に愛される美しい眺望や豊かな自然を有するこの六甲山とアートのコラボレーションを、アートファンのみならず観光やレジャーで訪れる人々にも体験してもらう現代アートの展覧会。開催11回目を迎える今回は招待アーティストの内田望、髙橋生也、谷澤紗和子×藤野可織、中村萌ら8組のほか、公募アーティスト合わせて約40組が参加を予定している。
https://www.rokkosan.com/art2020/

植松琢麿《world tree II》(2019)
植松琢麿《world tree II》(2019)
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2020 参考画像

 
◎山形ビエンナーレ2020(オンライン開催 2020年9月5日〜9月27日)
「震災後の東北において、アートとデザインで何ができるか?」というコンセプトのもと行われてきた芸術祭。4回目の今年は、「山のかたち、命のかたち」をテーマに、東京大学医学部附属病院で循環器内科を専門とする現役の医師、稲葉俊郎を芸術監督に迎える。稲葉は伝統芸能や民俗学、音楽や絵画などにも造詣が深く、医療と芸術の接点を探る著書『いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ—』(アノニマ・スタジオ、2017年)などを執筆している。

 
◎札幌国際芸術祭2020(開催中止 2020年12月19日〜2021年2月14日
3年に一度開催され、今回は初めての冬季開催。初回から掲げてきた大きなテーマ「都市と自然」に加え、今回は「Of Roots and Clouds: ここで生きようとする」をコンセプトに、雪や寒さを生かしたプログラムや、アイヌの人々、文化をはじめとする札幌・北海道、北方圏の歴史や風土を題材とした作品を展示する。現時点で参加予定の作家は青山悟、三上晴子、神田日勝、村上慧、キャロリン・リーブル&ニコラス・シュミットプフェラー、スザンヌ・トレイスター、Re:Senster、Cod.Actら約20組。統括ディレクターは天野太郎、企画ディレクターはアグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカ、コミュニケーション・ディレクターは田村かのこ。
https://siaf.jp/

三上晴子《欲望のコード》(2010)、山口情報芸術センター[YCAM](山口)での展示風景 Photo by Ryuichi Maruo(YCAM)Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
三上晴子《欲望のコード》(2010)、山口情報芸術センター[YCAM](山口)での展示風景 Photo by Ryuichi Maruo(YCAM)Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
札幌国際芸術祭2020 参考画像

 
◎ひろしまトリエンナーレ 2020 in BINGO(開催中止 2020年9月12日〜11月15日
古くから人々が集い交わってきた備後地域(福山市、尾道市、三原市)を回遊する、今年初開催の芸術祭。美術館や博物館といった施設のほか、旧映画館や旧銀行など、かつて多くの地域住民で賑わいを見せていた場所の約20施設が会場となる。参加アーティスト詳細は今春発表予定。
https://hiroshima-triennale.com/

おおだいらまこ《golden hour》(2019) 2019年度プレ事業展示作品(会場:福山城月見櫓)
おおだいらまこ《golden hour》(2019) 2019年度プレ事業展示作品(会場:福山城月見櫓)
ひろしまトリエンナーレ 2020 in BINGO 参考画像

 
◎奥能登国際芸術祭2020(会期未定 ※開催延期後の会期については公式サイトでご確認ください)
能登半島の最先端に位置し、日本海と美しい里山に囲まれた珠洲市で開催される。現在本州で最も人口の少ない市であり、都市化の波に取り残された日本の「さいはて」の地でもある同市。2回目の今年も総合ディレクターに北川フラムを迎え、最先端の美術と地域の伝統が響きあう芸術祭を目指す。青木野枝、中谷ミチコ、金氏徹平、さわひらき、アレクサンドル・ポノマリョフ、カールステン・ニコライなどの国内外を含む約40組の参加が予定されている。
https://oku-noto.jp/

ラックス・メディア・コレクティブ《うつしみ》(旧上戸駅)2017年制作
ラックス・メディア・コレクティブ《うつしみ》(旧上戸駅)2017年制作
奥能登国際芸術祭2020 参考画像

 
◎東京ビエンナーレ2020(開催延期 プレ期間:2020年 コア期間:2021年夏 ※会期詳細は公式ホームページをご確認ください プレ期間:2020年6月〜2021年7月 コア期間:2021年7月〜9月予定
アーティストの中村政人とクリエイティブ・ディレクターの小池一子が総合ディレクターを務める芸術祭。「純粋」×「切実」×「逸脱」をテーマに、アート、建築、デザイン、ファッション、テクノロジーなど、各業界を牽引するディレクター陣によるクロスジャンルなコンテンツを展開する。舞台となるのは、千代田区、中央区、文京区、台東区を中心に、学校や公開空地、寺社仏閣など多彩な場所。参加作家は伊藤ガビン、椿昇、長谷川逸子、高山明、内藤礼。
公式サイト

 椿昇《We’ll meet again 2020》
椿昇《We’ll meet again 2020》
東京ビエンナーレ 参考画像

 
◎房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス 2020(2021年3月20日〜5月16日 *2020年から2021年へ会期が変更になりました)
2014年より3年に1度行われてきた「いちはらアート×ミックス」は、市原市の歴史、文化、自然などの地域資源と現代アートとの融合を目指し、「晴れたら市原、行こう。」がコンセプト。小湊鉄道沿線の駅舎や周辺エリアの廃校や空き家や古民家など、ユニークなロケーションも特徴だ。今年の参加作家はアイシャ・エルクメン、アレクサンドル・ポノマリョフ、開発好明、蔡國強、馬良、レオニート・チシコフ、中﨑透、西野達、前田エマら80組。「指輪ホテル」による列車を使ったパフォーマンスも予定されている。
https://ichihara-artmix.jp/

アイシャ・エルクメン 作品イメージ
アイシャ・エルクメン 作品イメージ
房総里山芸術祭 ICHIHARA ART × MIX 2020 参考画像

 
◎北アルプス国際芸術祭(会期未定 ※開催延期後の会期については公式サイトでご確認ください)
北アルプスを見上げる、自然豊かな長野県大町市で行われる芸術祭。淺井裕介、川俣正、木村崇人、シルバ・グプタ、藤巻亮太(元レミオロメン)、宮永愛子、目など国内外のアーティスト14カ国・地域41組が参加する。また、この芸術祭は「大町の食文化や食材の発信」「訪れるお客様のおもてなし」を目的に、食にかんするプロジェクトの推進に取り組んでいるのも特徴。期間限定でオープンする「地彩レストラン おこひる公堂」など、地域の食文化に触れることのできるレストランも楽しみのひとつになりそうだ。ビジュアル・ディレクターはミナ ペルホネン設立者の皆川明。総合ディレクターは2017年に続き北川フラム。
https://shinano-omachi.jp/

淺井裕介《土の泉》Photo by Tsuyoshi Hongo
淺井裕介《土の泉》Photo by Tsuyoshi Hongo
北アルプス国際芸術祭 2017 参考画像(2020も公開)

藤江芽衣

藤江芽衣

2020年1月よりTokyo Art Beat / Staff Editor、Translator。大学院ではアメリカ文学を専攻。文学への熱意はアート全般へと広がり、現代アートの概観を得るべくギャラリーや美術館を日々巡っている。