だから“私”は救われたい:米谷健+ジュリアの大規模個展が角川武蔵野ミュージアムで11月開催へ

アートを通して環境問題や社会問題を見つめてきた米谷健+ジュリア。日本の美術館では初となる大規模個展が角川武蔵野ミュージアムで開催となる

In Art Beat News by Art Beat News 2020-09-29

隈研吾が設計を手がけた特徴的な建築が話題を呼んでいる、図書館と美術館と博物館が融合した「角川武蔵野ミュージアム」。今年8月、埼玉県所沢市にプレオープンしたこのミュージアムが11月6日にいよいよグランドオープンを迎える。

そのオープン第1弾展として行われるのが、日本人とオーストラリア人によるアーティストユニット、米谷健+ジュリアによる日本初の大規模な個展「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」だ。

米谷健+ジュリアは、2009年にヴェネチア・ビエンナーレのオーストラリア代表の1組として選出されるほか、「シンガポールビエンナーレ 2013」(シンガポール国立美術館)、個展「The Last Temptation」(オーストラリア国立美術館、2015年)、「ホノルル・ビエンナーレ2017」の参加など、国際的な活動を展開。今年10月27日よりニューヨークにて開催される第1回アジア・ソサエティ・トリエンナーレにも参加予定のアーティストだ。現在は京都の農村を拠点に、無農薬農業を兼業しながら作家活動を行なっている。本展は、そんなふたりの代表作をまとまったかたちで見ることのできる日本初の大規模個展となる。

米谷健+ジュリアがこれまで発表してきたのは、主に社会問題や環境問題に向き合った作品だ。例えば、ウランガラスが放つ緑の発光が印象的なシャンデリアのインスタレーションシリーズ「クリスタルパレス」(2012-)は、シャンデリアの一つひとつに原発保有国の名前がつけられており、その原発からつくられる電力の総出力とシャンデリアの大きさを比例させた作品。シリーズのきっかけとなったのが2011年の福島第一原発事故で、現在32か国分が完成している。

同じくウラガンガラスが素材となるのは、大きな蜘蛛の立体作品《大蜘蛛伝説》(2018)。ウランの採掘が行われていた岡山県の人形峠に伝わる伝承から着想を得た本作だが、対となる巨大蟻の作品《生き物の記録》(2012)は、森美術館に収蔵されている。

いっぽう、全長約9mに及ぶテーブルに豪華に並べられたワイン、食べ物、食器などが西洋の晩餐会を彷彿とさせる巨大インスタレーション作品《最後の晩餐》(2014)は、じつは素材すべてが「塩」。オーストラリアでの大規模農業における過度な灌漑が引き起こした塩害をテーマに、環境破壊に加え、食の安全性への疑念と不安をもとに制作された。本作は、今回の展覧会で日本初公開となる。

注目の新作は、人と環境の共生世界の崩壊を表現した《Dysbiotica》(2020)。磁器土で作られた作品の表面は、微生物、珊瑚のようなパーツで覆われており、地球規模で進んでいる珊瑚の白化現象を想起させる。タイトルの「Dysbiotica」とは、腸内細菌のバランスが崩壊する「Dysbiosis」の造語だという。

美とユーモア、そして鋭い眼差しを併せ持つ彼らの作品。本展サブタイトルで悲痛に響く「だから私は救われたい」のメッセージの「私」とは誰、あるいは何なのか、展覧会から汲み取りたい。

なお本展の関連イベントとして、「微生物」をテーマにした子供向けワークショップや3つのトークイベントも開催予定だという。イベントの詳細は決まりしだい公式サイトで発表されるため、こちらも楽しみに続報を待ちたい。

■展覧会タイトル:「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」
■日時:11月6日〜2021年3月7日
■角川武蔵野ミュージアム4F エディット アンド アートギャラリー
■開館時間:10:00〜18:00 (金土は〜21:00)
公式サイト

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