バイデン勝利を受けて、ギャラリーでのパワハラ、メトロポリタン美術館に初の女性理事など:週刊・世界のアートニュース

ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目ニュースをピックアップ

In Art Beat News by Kosuke Fujitaka 2020-11-17

いま、世界のアート界では何が起こっているのか? ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目のニュースをピックアップ。今回は、11月7日〜13日のあいだに世界のアート系メディアで紹介されたニュースを「トップニュース」「アート業界の劣悪な職場環境」「できごと」「Aftershockシリーズ」「おすすめの展覧会」の5項目で紹介する。

トップニュース

◎バイデン-ハリス勝利を受けてコメント
11月3日の大統領選挙から4日後の11月7日にやっと大手メディアはバイデンの当確を報じた。バイデン-ハリス勝利を受けたアーティストや批評家、ギャラリストなど様々な業界者からの賛辞のコメントを翌8日にまとめた記事。
https://www.theartnewspaper.com/news/art-world-rejoices-in-biden-s-win-of-us-presidency

◎ジョン・ウォーターズのコレクション
カルト映画監督のジョン・ウォーターズがアートコレクション372点を、生まれ育った街のボルチモア美術館に寄贈することを約束。ダイアン・アーバス、サイ・トゥオンブリー、クリストファー・ウールなど錚々たるコレクション。彼らしさが爆発するのはなんと美術館のトイレ2つに彼の名前を冠してほしいと要請したこと!
https://observer.com/2020/11/john-waters-donating-art-baltimore-museum/

◎一世風靡したアーティストを振り返る
2000年以降に一世を風靡したが振るわなくなったアーティストやテイストを振り返る記事。アンセルム・ライル、ダン・コーレン、アシューム・ビビッド・アストロ・フォーカスなどが挙げられており、個人的には懐かしいと同時にちょっと切ない。インスタグラム時代前のど派手なインスタレーションが多い。それらの中心だったともいえるDeitch Projects(ダイチ・プロジェクト)の大型展示は本当に楽しかった。
https://www.artnews.com/art-in-america/features/underrated-overrated-art-of-the-2000s-1234576148/

アート業界の劣悪な職場環境

◎最大手ギャラリーも矢面に
最大手のひとつ、ペース・ギャラリーの職場環境がブラックで虐待的であるという多くの現・前従業員から証言を取った取材記事。創業者から2代目に移譲しつつあるなか、創業者時代からの2人のトップディーラーへの非難が中心。うちひとりは、従業員へのハラスメント以外にも、顧客であるコレクターがどの国の人かで作品の値段を釣り上げていたという証言も出ている。また、白人中心のギャラリー従業員の多様化を図る責任者に創業者の孫である若い白人スタッフが選ばれたことへの反発も大きい。俗人的で狭い人間関係、古い体質が残る業界だけに規模の拡大とともにこのような綻びがどんどん出てきている。
https://news.artnet.com/market/pace-workplace-culture-1922863

上記記事が出た翌日に、ペース・ギャラリーはその2人のトップディーラーへの法的調査を発表。調査の間、2人は有給でリモートワークをするとのことだが、取材に応えた匿名の従業員らは、これで体質が変わるとは思えないと非難。
https://news.artnet.com/market/pace-gallery-launches-legal-investigation-against-top-presidents-1923660

◎パワハラを非難し、理事を辞任
ニューミュージアムと連携関係にあるデジタルアート財団のライゾームの理事のひとりでコレクターのSeth Stolbunが辞任。先月ニューヨーク・タイムズに掲載されたニューミュージアムでパワハラなどが横行しているという記事を受けて、ライゾームがニューミュージアムとの連携を辞めるべきであると提言したが、聞き入れられなかったためとのこと。
https://artreview.com/rhizome-board-member-resigns-in-protest-of-new-museum-leadership/

できごと

◎サザビーズが脱税幇助
オークションハウスのサザビーズが、NY州司法長官から脱税幇助で訴えられる。あるコレクターが2010年から15年の間に計28億円以上のアートをコレクション目的で買ったにもかかわらず、再販するディーラーとして購入したようにして州の物品販売税を脱税するのを幇助したと。コレクターはすでに罰金の支払いで司法省と和解している。
https://news.artnet.com/art-world/sothebys-new-york-attorney-general-lawsuit-1921785

◎財団運営につきものの揉め事
ロバート・インディアナの専属代理契約をしていた財団と、本人の遺産管理財団が2年半の長い訴訟の上、タームシートでの基本合意に達したそう。双方の弁護士費用だけで8億円以上かかっているという。有名作家が亡くなったあとの財団運営はこのように揉める例が本当に多い。
https://www.pressherald.com/2020/11/06/robert-indianas-estate-art-representative-reach-agreement/

◎7の新アートセンター
ナイジェリア、ガーナ、トーゴなど西アフリカ諸国に新しくできた様々な形の7のアートセンターを紹介する記事。コレクター主導で大学内にできた美術館や、インカ・ショニバレCBEがつくったレジデンス、トーゴの首都ロメの元大統領官邸をリノベしてできたアートセンターなど。
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-7-west-african-institutions-animating-regions-contemporary-art-scene

◎アート受容に関する調査
昨秋に人文科学についての調査が全米5000人を対象に行われ、8割の人がアートを好意的に感じていることがわかった(科学技術より若干少ない)。ただ美術館などに定期的に行くのは1割強で、大卒や高所得層で若干その割合は上がる。ヒスパニック、黒人は詩や本の朗読会に白人の3倍行くという結果も。また、美術史などの授業を高校までにやるべきかという質問には約半数だけが重要だと答えたが、その割合は男性より女性のほうが多かった。
https://hyperallergic.com/601176/how-do-americans-feel-about-the-arts-a-new-survey-offers-insights/

◎話題のスペースがオープン延期
マイアミで12月にオープン予定だった没入型アートスペースのSuperblueがコロナの影響でオープンを来春に延期。タレルやチームラボのオープニング展ラインアップはそのまま。
https://www.miamiherald.com/entertainment/visual-arts/article247015377.html

◎ハッキング予防
最古と思われる聖書写本や、ミケランジェロ、ガリレオの手記、ドローイングなど8万点をデジタル化しているバチカン図書館が、ハッキングを未然に防ぐためにAIを使ったセキュリティ企業を雇ったそう。月に100件以上のハッキングの脅しがあるという。
https://news.artnet.com/art-world/vatican-library-artificial-intelligence-1921989

◎奈良美智作品がLACMAコレクションに
奈良美智の7メートル以上の屋外彫刻作品が個展開催中(コロナで現在は一時閉館中)のロサンゼルスのLACMAのコレクションに。
https://www.artsy.net/news/artsy-editorial-los-angeles-county-museum-art-acquired-25-foot-tall-yoshitomo-nara-sculpture

◎メトロポリタン美術館に初の女性理事
メトロポリタン美術館が次の理事長をはじめて二人共同の形式にし、そのうちのひとりキャンディス・バイネッケ(Candace K. Beinecke)ははじめての女性。弁護士事務所のパートナー。もうひとりのハミルトン・ジェイムス(Hamilton E. James)は投資ファンド会社Blackstoneの副会長。
https://www.theartnewspaper.com/news/metropolitan-museum-board-appoints-first-woman-co-chair

◎ナウマンのパブリックアートが取り壊される
ドイツのミュンスター大学内にあったブルース・ナウマンのパブリックアート作品《Square Depression》が新しいビルを建てるために取り壊された。キュレーターのカスパー・ケーニヒの招待で77年のミュンスター彫刻プロジェクトのために考案された25メートル四方の中を歩くことができる作品。実際には2007年に実現されたものだという。キャンパス内に移築される予定だが、場所や時期は未定。大型作品ならではの難しい問題。
https://www.artnews.com/art-news/news/bruce-nauman-munster-sculpture-removed-1234576435/

◎BLMペイント消去
ニューヨーク郊外の廃校をジャック・シャインマン画廊がリノベしたスペース、The Schoolの前面にニック・ケイヴがBLMを受けて警察のやり方についての議論を起こすために“Truth be told”と大きくペイントした作品に、街が消防上の違反を理由に撤去を求めている。ニューヨークとはいえ郊外のやや保守的な地域。
https://www.artnews.com/art-news/news/nick-cave-truth-be-told-removal-controversy-1234576274/

Aftershockシリーズ

◎選挙に関するアートフォーラムのシリーズ
アートフォーラムが10人のアーティストに画像、ビデオ、テキストなど様々な形式で選挙に対する反応を寄せてもらうAftershockというシリーズを公開している。グレン・ライゴンクリスティーン・サン・キムマーサ・ロスラーポール・チャンドレッド・スコットケイ・ローゼンEbecho Muslimovaロレイン・オグレイディヴァギナル・デービスマイケル・ラコヴィッツという幅広い顔ぶれ。

おすすめの展覧会

◎MoMA常設展に日本の作家も登場
去年10月にリノベーションを経て再オープンしたMoMAだが、今週末から常設展示を半年に一度入れ替えてローテーションしていく。これまで西洋中心でほとんど入れ替えがなかった展示作品を、もっと柔軟に多様化していくのがねらい。なんと4階の50年代を紹介する一室では日本の具体美術協会の田中敦子、白髪一雄、山崎つる子などを展示、さらに4階の別の部屋ではいわゆるミニマルな抽象作家による作品が紹介され、そこに李禹煥の1974年の絵画《From Line》が展示されているとのこと。
https://www.nytimes.com/2020/11/12/arts/design/moma-permanent-collection-rehang.html?referringSource=articleShare

◎コロナ禍で大人気の屋外彫刻公園
ニューヨークの郊外にある屋外彫刻公園ストームキングアートセンターはコロナの影響で大人気だという。ゴルフ場のような500エーカー(東京ドーム40個以上!)の広大な敷地に115の巨大作品が並ぶ。60年にオープンしてからの歴史を紐解く記事。ニューヨーク市から車で行く必要があるがオススメ!
https://www.artnews.com/feature/storm-king-art-center-most-famous-works-1234576216/

Kosuke Fujitaka

Kosuke Fujitaka. 1978年大阪生まれ。東京大学経済学部卒業。2004年、Tokyo Art Beatを共同設立。08年より拠点をニューヨークに移し、NY Art Beatを設立。アートに関する執筆、コーディネート、アドバイスなども行っている。 ≫ 他の記事

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