公開日:2021年6月4日

2021年注目の展覧会をピックアップ! マティス、KAWS、震災を振り返る展覧会など11選

2020年に開催が予定されている展覧会の中から、編集部おすすめの12の展覧会を紹介

20世紀巨匠の日本では久しぶりの個展や、現代アートのシーンで独自の位置を占める作家の個展など、注目の展覧会が目白押しの2021年。現在発表されている展覧会の中から、東京近郊で行われる現代アートの展覧会を中心に11のおすすめを会期順に紹介する。

*新型コロウイルス感染拡大対策の影響から、臨時休館や会期変更の可能性があります。お出かけの際には事前に公式サイトをご確認ください

◎「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」(神奈川県立近代美術館 葉山、2021年1月9日〜4月11日 ※1月12日より臨時休館)

アイルランド出身の画家フランシス・ベーコン(1909–1992)の、日本初公開となる作品・資料を紹介する展覧会。生前のベーコンと深い交流のあったバリー・ジュールが、亡くなる直前の画家から譲り受けた作品や資料は、近年各国の美術館で展示・収蔵され大きな話題となった。ベーコンが生前けっして世に出すことのなかった「秘密」――つくらないとされていた素描、参照していたおびただしい印刷物と、そこに描かれた線や図像、そして、そのほとんどを破棄したと言われていた、シュルレアリスムに傾倒した若き日の絵画たち。本展では、死の直前まで巨匠がひそかに手元に残した初期絵画作品や素描、資料など約130点を日本で初公開する。

フランシス・ベーコン《2人のボクサーの写真上のドローイング》 1970年代–1980年代頃 ©The Barry Joule Collection

フランシス・ベーコン《Xアルバム9裏ー叫ぶ教皇》 1950年代後半–1960年代前半 ©The Barry Joule Collection

 
◎「千葉正也個展」(東京オペラシティ アートギャラリー、2021年1月16日〜3月21日)

千葉正也(1980-)はまず、紙粘土や木片で人型のオブジェをつくり、寄せ集めた身の回りの品々とともに周到に配置して仮設の風景を制作。これを、木、金属、プラスチックなどの質感を精巧に描き分けるテクニックを駆使して絵画化し、こうして完成した作品を、自作の簡素な木製スタンドに置いたり、一定時間ごとに作品を入れ替えたりするなど、あらためて現実の空間に展開させることによって、絵画と彫刻の境界を渾然一体化させる。古今東西の絵画表現のさまざまな達成や成果を誠実に継承しつつ、現代アートの枠組みに対して、絵画という長い歴史をもつメディアを通じて揺さぶり動かそうとする大胆不敵なアプローチは実にユニークで、エキサイティングな鑑賞体験をもたらしてくれるだろう。なお本展では、千葉が飼育している亀も展示会場内に現れる。

東京オペラシティ アートギャラリーではこのほかに、加藤翼やライアン・ガンダーの個展も予定されている。

千葉正也《平和な村》 2019-2020 油彩、キャンバス 東京国立近代美術館蔵 ©Masaya Chiba / Courtesy of ShugoArts

 
◎「3.11とアーティスト:10年目の想像」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2021年2月20日〜5月9日)

東日本大震災から10年目を迎える2021年3月。「想像力の喚起」をテーマとした展覧会「3.11とアーティスト:10年目の想像」が行われる。出品作家は、加茂昂、小森はるか+瀬尾夏美、佐竹真紀子、高嶺格、ニシコ、藤井光、Don’t Follow the Wind。本展では原子力発電所の事故を受け、人々が巷で交わした会話を再現した映像作品を通し、10年前の私たちを思い起こすほか、被災地に通い続けたアーティストが、当地で見た風景や聴いた言葉を、絵やテキスト、映像などで表した作品を通して、10年間という年月の経過、そのなかにおける変化と不変を見つめる。出品作家のひとりである藤井は、かつてキング牧師の暗殺事件を受けてアメリカ人教師が行った1960年代の伝説の授業を、県内の教育者の協力を得て3.11後版に書き換え、日本の小学生とともに再演し、新作として発表する。3月11日は入場無料。

小森はるか+瀬尾夏美《二重のまち/交代地のうたを編む》 2019 ©Komori Haruka + Seo Natsumi

 
◎「生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」(SOMPO美術館、2021年3月23日〜6月6日)

2022年に生誕150周年を迎えるピート・モンドリアンの、日本では23年ぶりとなる個展では、あまり知られていない自然主義的な初期の風景から晩年の抽象画に至る過程をたどる。また、1917年に画家のテオ・ファン・ドゥースブルフらと結成した「デ・ステイル」の作家など、関連する作品をあわせて展示し、同時代の作家との交流を明らかにする本展。オランダのデン・バーグ美術館所蔵のモンドリアン作品50点と、国内外美術館から借用するモンドリアン作品と関連作家作品約20点が集まる。

ピート・モンドリアン《大きな赤、黄、黒、灰、青色のコンポジション》 1921年 油彩、キャンバス デン・ハーグ美術館蔵 Kunstmuseum Den Haag

 
◎「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」、「ライゾマティクス_マルティプレックス」(東京都現代美術館、2021年3月20日〜6月20日)

東京都現代美術館では、2つの注目展覧会が同時開催される。まずは、現代のアートシーンに独自の位置を占める作家、マーク・マンダースの国内美術館では初となる個展「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」。本展には、近年のマンダースの重要な個展で必ず出品されてきた、本邦初公開となる代表作が展示される。

そして、ビョーク、Perfume、野村萬斎らとのコラボレーションなど多数の実験的なプロジェクトを行ってきたフルスタック集団「ライゾマティクス」の展覧会。本展では、彼らが展開してきた領域横断的なクリエイションを展望するとともに、「現在」とクリティカルにシンクロする新作プロジェクトを展示。オンライン上にもハイブリッドに展開する新作やアーカイブを通して、絶え間なく変化する世界と同期する彼らの卓越した試みを複合的に示す。

マーク・マンダース スタジオ風景

Rhizomatiks Research×ELEVENPLAY×Kyle McDonald《discrete figures Special Edition》2019年10月6日 札幌文化芸術劇場 hitaru 主催:札幌文化芸術劇場 hitaru(札幌市芸術文化財団)・ライゾマティクス ©kenzo kosuge [参考図版]

 
◎「イサム・ノグチ 発見の道」(東京都美術館、2021年4月24日~8月29日)

日本人を父に、米国人を母に生まれたイサム・ノグチ(1904-1988)は、東西の間でアイデンティティーの葛藤に苦しみながら、独自の彫刻哲学を打ち立てた20世紀を代表するアーティスト。20代で彫刻家コンスタンティン・ブランクーシと出会い、そのヴィジョンに決定的な影響を受けたノグチは、自然と通底する抽象のフォルムが生み出す世界を、生涯を掛けて追い求めた。そのいっぽう、ノグチは戦争によって、両親の祖国が互いに敵国になるという痛恨事を経験しており、平和への強い願いを込めた作品も残している。本展は、ノグチの日本文化への深い洞察や、その今日的な意味を明らかにし、彼の彫刻芸術の核心に触れる機会をもたらす。

「AKARI CLOUD」インスタレーション イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)での展示風景(2018-19年) Photo:Nicholas Knight ©The Noguchi Museum /ARS

 
◎「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」(森美術館、2021年4月22日~9月26日)

世界各地で挑戦を続ける70代以上の女性アーティスト16名に注目し、それぞれの活動に光を当てる展覧会。本展では、絵画、映像、彫刻、大規模インスタレーションにパフォーマンスなどの多彩で力強い作品を通して、長いキャリアのなか、ひたむきに挑戦し続けてきた彼女たちの特別な力、「アナザーエナジー」とは何かを考える。出品作家は、エテル・アドナン、フィリダ・バーロウ、アンナ・ボギギアン、ミリアム・カーン、リリ・デュジュリー、アンナ・ベラ・ガイゲル、ベアトリス・ゴンザレス、カルメン・ヘレラ、キム・スンギ、スザンヌ・レイシー、三島喜美代、宮本和子、センガ・ネングディ、ヌヌンWS、アルピタ・シン、ロビン・ホワイト。

アルピタ・シン《私のロリポップ・シティ:双子の出現》 2005年 油彩、キャンバス 152.4×213.3 cm ヴァデラ・アート・ギャラリー(ニューデリー)蔵

 
◎「マティス 自由なフォルム」(国立新美術館2021年9月15日~12月13日※新型コロナウイルスの影響で2022年に開催変更になりました

大胆な色彩表現が特徴であるフォーヴィスムの中心人物として20世紀初頭、パリで頭角を現した20世紀最大の巨匠のひとり、アンリ・マティス(1869-1954)。本展は、フランスのニース市マティス美術館の所蔵作品を中心に、日本でまとめて展示されることはきわめて稀だという切り紙絵に焦点を当てながら、絵画、彫刻、素描、版画、テキスタイルなどの作品やマティス旧蔵のオブジェ等を紹介するもの。本展ではさらに、マティスが最晩年にその建設に取り組んだ、芸術家人生の集大成ともいえるヴァンスのロザリオ礼拝堂にも着目し、建築から室内装飾、祭服に至るまで、マティスの至高の芸術を紹介する。

 
◎「KAWS TOKYO FIRST」(森アーツセンターギャラリー、7月16日〜10月11日)
目の箇所に×印を施したキャラクターを使用した色彩豊かな作品や、数々のコラボレーションで知られるKAWSの日本初の大型展覧会が開催へ。約70 点の絵画や彫像、プロダクトを通して、そのユニークな芸術制作の軌跡や美術史的意義をたどる本展は、KAWSが保有するプライベートコレクションの中から、自身が影響を受けたアーティストの作品も展示予定という、ファン必見の展覧会。「KAWS TOKYO FIRST」は、2001年に渋谷パルコで行われた自身日本初個展と同タイトルであり、原点回帰の想いが込められている。

KAWS ACCOMPLICE , 2010 © KAWS, photograph by Jonty Wilde

KAWS © Nils Mueller for Wertical

 
◎「柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年」(東京国立近代美術館、2021年10月26日〜2022年2月13日)

柳宗悦の没後60年に開催される本展は、各地の民藝のコレクションから選りすぐった陶磁器、染織、木工、蓑、ざるなどの暮らしの道具類と大津絵をはじめとする民画に、雑誌、書籍、写真、映像などの同時代資料をふんだんに交え、総点数400点を超える作品・資料を展示。それらを通して、時代とともに変化し続けた民藝の軌跡を新しい視点から解き明かしていく。今、注目を集める民藝の100年の歴史の厚みを知ることで、これからの民藝の可能性が開けてくることが期待される。

バーナード・リーチ《書斎の柳宗悦》 1918年

染付秋草文面取壺 朝鮮半島  18世紀前半

2021年はそのほかにも、「クールベと海展―フランス近代 自然へのまなざし―」(パナソニック汐留美術館、4月10日~6月13日)、特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」(東京国立博物館、4月13日〜5月30日)、「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」(世田谷美術館、3月20日〜6月20日)、「Viva Video! 久保田成子展」(新潟県立近代美術館、3月20日~6月6日[東京都現代美術館に巡回予定])、「ピピロッティ・リスト:Your Eye is My Island -あなたの眼はわたしの島-」(京都国立近代美術館、4月6日〜6月13日[水戸芸術館現代美術ギャラリーに巡回予定])など、多領域で注目の展覧会が多数。開催を楽しみに待ちたい。

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