公開日:2021年3月8日

新たなアートフェアのかたちを京都から:「ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021」が開幕!

目指すのはオルタナティブなアートフェア。「ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021」が今年も開幕

3月6日、京都が舞台の現代アートのフェア「ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021」が京都府京都文化博物館 別館、京都新聞ビル 地下1階の2会場で開幕した。会期は3月6日、7日の2日間。2018年に京都でスタートし、今年で4回目となる。

従来のアートフェアと言えばイメージするのが、広い会場に細かく仕切られたブースと、ブースの中で来場者を迎えるギャリストやギャラリースタッフではないだろうか。しかし、オルタナティブな姿勢を打ち出すARTISTSʼ FAIR KYOTO(AFK)はそれらとは一味異なるもの。

まず、メインの会場デザインは建築ユニットのdot architectsが担当。足場のような機構が並び、シームレスで見晴らしのよい空間が立ち上がっている。そして、来場者を迎えるのは、ギャラリースタッフではなくアーティスト自身。椿昇をディレクターに、フェアの出品アーティストは、加藤泉、金氏徹平、塩田千春、名和晃平、松川朋奈、宮永愛子ら国内外で活躍する17名のアーティストによって選ばれているという、正真正銘アーティスト主導のアートフェアと言えるだろう。

早速、ARTISTSʼ FAIR KYOTOの各会場を見ていこう。

ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021のメイン会場(京都府京都文化博物館 別館) 撮影:前端紗季

重要文化材でもあるメイン会場

メイン会場のひとつ、京都府京都文化博物館 別館は辰野金吾とその弟子・長野宇平治が設計した明治39(1906)年竣工の建築で重要文化財。この歴史ある空間には、壁掛けの平面作品が中心に集まっている。作品の中には、若手でありながらもすでに特定のコレクターがつく人気作家の作品もある。今回のメインビジュアルになっている高瀬栞菜《牽制し合うチーター》(2020)が見られるのもこの会場。また、公募作品はいずれも高い倍率をくぐりりぬけて展示に至った作品だ。

ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021のメイン会場(京都府京都文化博物館 別館) 撮影:前端紗季
ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021のメイン会場(京都府京都文化博物館 別館) 撮影:前端紗季
京都府京都文化博物館 別館より、檜皮一彦《untitled》

京都新聞ビルではグランプリ作品も展示

続いては、もうひとつのメイン会場である京都新聞ビル地下1階へ。この会場には、大型のインスタレーションや立体作品、映像作品などが並ぶ。

今回のARTISTSʼ FAIR KYOTOの注目ポイントは、メイン協賛企業の株式会社アカツキ支援のもと、若手アーティスト活動支援のための初となるアワード「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2021 Akatsuki ART AWARD」が設けられたこと。飯田志保子(キュレーター)、中井康之(国立国際美術館研究員)、山峰潤也(一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表、ANB Tokyoディレクター)、椿昇の審査のもと、最優秀受賞者は100万円に加え、副賞としてANB Tokyoでの個展開催の権利が授与される。今回、このグランプリを受賞したのが京都新聞ビル地下1階で展示を行う野田幸江だ。

花屋で働きながらアーティスト活動を行う野田のグランプリ受賞作品《フィールド》は、野草を含む様々な植物を寒天などを用いて凝固させた、大きな繭を思わせる自然物のオブジェからなるインスタレーション。審査員の飯田は本作について、「触知的で有機的なフォームが魅力的。庭をモチーフに作品を手がけるアーティストは西洋にもたくさんいますが、野田さんの作品もそれらの系譜に続くような、今後の作品を見てみたいという期待を込めました」と評した。

優秀賞を受賞したのはたかくらかずき、NAZE、檜皮一彦、藤本純輝の4名。たかくらとNAZEの作品は京都新聞ビル地下1階で、檜皮、藤本の作品は京都府京都文化博物館 別館に展示されている。

ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021のメイン会場(京都新聞ビル地下1階) 撮影:高橋保世
大賞を受賞した野田幸江《フィールド》
優秀賞を受賞したたかくらかずき《アプデ輪廻 ver1.0》

見どころ多彩なサテライトイベント

ARTISTSʼ FAIR KYOTOで見逃せないのは、見どころ多彩なサテライトイベント。フェアのコンセプトに共感した企業が京都から発信するアートシーンをともに盛り上げるため、過去のフェアに出品した作家とコラボレーションした展覧会を開催するというもので、毎年、ユニークな場所と展覧会の組み合わせが楽しい。

例えば、200年以上続く老舗湯葉店・千丸屋京湯葉本店の元工場スペースでは、スモークが立ち込める部屋全体をサウンドインスタレーションにした黒川岳「奥の工場見学」が。伝統ある京町家の宿・庵町家ステイでは、「私とは何か、人間とは何か」をテーマに絵画を制作してきた品川美香が、日本家屋に合う独自の作品サイズ、色彩を用いた新作を発表している。そして、2020年にリニューアルされホテルや映画館が入居する新風館の中庭では、現代アートのユニット「Yotta」が、大砲型のポン菓子機で実食可能なポン菓子をつくる「『穀』ヨタのおいしいポン菓子」を実演中だ。場所性が強い作品が集まるサテライトイベントは、ぜひ訪れてほしい。

庵町家ステイにて、品川美香「わたしが魚だったころ」展
千丸屋京湯葉本店にて、黒川岳「奥の工場見学」展
藤井大丸にて、鬼頭健吾の展示

オルタナティブなアートフェアのこれから

2018年から実績を重ね、京都拠点の作家と各地のコレクターを結ぶ拠点となっているARTISTSʼ FAIR KYOTO。しかし、あくまでディレクターの椿が目指すのはオルタナティブなフェアのかたちだ。「安定して、固定化してはつまらない。つねにオルタナティブであり、外部であり、偏狭であるという意志のもとでかたちを変え続けていきたい」と椿は話す。また、本フェアはアーティストと鑑賞者の教育の場であり、「アートバブルにつぶされないシステムを組むための試行」でもあると語った。

世はアートバブルと言われて久しいが、会場にいるのはどの時代も変わらず存在する、それぞれの方法で表現を追求するアーティストと作品。彼らと対話をし、アートに対する理解を深めるきっかけを見つけてほしい。

ディレクターの椿昇。背景の作品はARTISTSʼ FAIR KYOTOメインビジュアルに使用された高瀬栞菜の作品
ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2021のメイン会場(京都府京都文化博物館 別館) 撮影:前端紗季

■ARTISTS’ FAIR KYOTO 2021 開催概要
日程:2021年3月6日、7日
会場:京都府京都文化博物館 別館/京都新聞ビル地下1階
時間:10:00~18:00
URL:https://www.artists-fair.kyoto/
入場料:一般 1800円、学生 1000円(学生無料 要・学生証) ※京都新聞ビル地下1階は無料
主催:京都府、ARTISTS’ FAIR KYOTO 実行委員会
共催:京都新聞
後援:京都商工会議所、一般社団法人京都経済同友会

【若手アーティスト】()内は推薦アーティスト、又は公募選出者
東慎也(鬼頭健吾)/飯田美穂(公募)/WHOLE9(Mon Koutaro Ooyama)/大河原光(松川朋奈)/太田桃香(椿昇)/岡田佑里奈(大庭大介)/奥山帆夏(薄久保香)/國政サトシ(中村裕太)/黒坂祐(大庭大介)/小嶋晶(鶴田憲次)/合田徹郎(塩田千春)/佐々木光(宮永愛子)/佐藤壮馬(公募)/佐貫絢郁(鬼頭健吾)/許芝瑜(金氏徹平)/渋谷七奈(加藤泉)/清水浩三(中村裕太)/たかくらかずき(井口皓太)/高瀬栞菜(公募)/竹内義博(大庭大介)/田島大介(公募)/土取郁香(薄久保香)/椿野成身(池田光弘)/中澤ふくみ(Yotta)/長島伊織(松川朋奈)/NAZE(井口皓太)/西垣肇也樹(椿昇)/野田幸江(名和晃平)/檜皮一彦(ヤノベケンジ)/藤田紗衣(金氏徹平)/藤野裕美子(塩田千春)/藤本純輝(池田光弘)/札本彩子(塩田千春)/前端紗季(椿昇)/MIZPAM(Mon Koutaro Ooyama)/溝渕珠能(矢津吉隆)/山越美佳(公募)/山田康平(名和晃平)/山中雪乃(Yotta)/油野愛子(薄久保香)/REMA(ヤノベケンジ)/六根由里香(矢津吉隆)
【アドバイザリーボード・ディレクター:8組】
池田光弘/大庭大介/鬼頭健吾/塩田千春/松川朋奈/Mon Koutaro Ooyama/Yotta/椿昇

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