母親作家に必要なサポート、バンクシー人気に便乗、入館には陰性証明が必要?など:週刊・世界のアートニュース

ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目ニュースをピックアップ

In Art Beat News by Kosuke Fujitaka 2021-05-18

いま、世界のアート界では何が起こっているのか? ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目のニュースをピックアップ。今回は、5月8日〜14日のあいだに世界のアート系メディアで紹介されたニュースを「アート業界での女性、母親」「できごと」「アートマーケット」「おすすめの展覧会、読み物」の4項目で紹介する。

アート業界での女性、母親

◎母親作家を除外しないためのガイドライン
多くの母親アーティストが自分のキャリアのために母親であることを隠しているほど、これまで美術館などが母親作家にとって必要なサポートなどを考慮に入れてこなかった。母親作家が除外されることがないように、英ライターのヘティ・ジュダ(Hettie Judah)がインタビューや調査の上、10項目からなるガイドラインを作成した。
例えば、1. 文化施設として、家族を持つ作家を明示的に歓迎すること。5. アーティストのチャイルドケアに特定の予算をつけることを考慮すること。6. 子どもがいる作家にも都合のいいオープニングやイベントのスケジュールをたてること。近年ハイライトされている女性差別を是正する動きからこぼれ落ちている追加の側面。
https://news.artnet.com/art-world/guidelines-artist-mothers-1967425

◎初の女性・有色人種のキュレーター
ワシントンDCのナショナルギャラリーのチーフキュレーターにE・カルメン・ラモス(E. Carmen Ramos)が就任。このポジションとしては初の女性で、初の有色人種だという。これまでスミソニアンアメリカ美術館でラテンアメリカアートのキュレーションを手掛けてきた。
https://www.artnews.com/art-news/news/e-carmen-ramos-national-gallery-of-art-chief-curator-1234592791/

◎1.3億円の助成金使い道
西テキサスのマルファにあるドナルド・ジャッドが創設したチナティ財団が、Twitter創業者のジャック・ドーシーから約1.3億円の助成金を受け取る。美術館の一部の修復や、そのための日干しレンガ修復のために地元の女性にジョブトレーニングをしたり、有償のインターンシッププログラムのために使われる。
https://www.artnews.com/art-news/news/chinati-foundation-marfa-restoration-grant-1234592732/

できごと

◎エイズで亡くなった作家を紹介
今年でエイズが認識されて40年になるのに際して、ギャラリーのデイビッド・ツヴィルナーではエイズで亡くなった作家を紹介する計6つ展覧会をNYとロンドンで、6月からと9月からの2つのフェーズで開催する。映画監督のデレク・ジャーマンが入っているが、これまであまり知られてこなかった作家が中心。
https://www.artnews.com/art-news/news/david-zwirner-more-life-exhibition-series-1234592374/

◎入館には陰性証明が必要?
オランダで、美術館などの再開を早めるために、施設入館に際してコロナ陰性証明を求めることを義務付ける法案が審議されている。だが、これは来館者が試験費用を負担する必要があり、来館へのさらなるコスト増になることで来館者大幅減につながるとして館長達100人以上が反対意見を表明した。
https://news.artnet.com/art-world/netherlands-museum-directors-oppose-covid-testing-1967269

◎バンクシー人気に便乗
バンクシーのプリント作品を燃やして、作品の写真をNFTにして販売した匿名「作家」のBurnt BanksyにNew Yorkerがインタビュー。販売後ものすごい憎悪、反発がよせられたとのことだが、すでにアジアの暗号通貨投資家などから2億円以上を集めて、NFTのオークションサービスと、NYにNFT作品を展示するギャラリースペースを開く計画。
https://www.newyorker.com/magazine/2021/05/17/burnt-banksys-inflammatory-nft-not-art

◎あの有名兄弟が作品を物色
先週NYで開催されたFriezeアートフェアでは、暗号通貨業界の大投資家でNFTプラットフォームNifty Gatewayのオーナーのウィンクルボス兄弟が、LA MOCAの館長ビーゼンバッハに付き添われて作品を物色していたとのこと。
https://pagesix.com/2021/05/10/winklevoss-twins-eye-48k-piece-at-frieze/

◎ターナー賞を批判
先日ターナー賞にノミネートされたコレクティブの一つBlack Obsidian Sound Systemが最近のテート(ターナー賞の主催者)のリストラや、ノミネートから選考展まで4ヶ月しかあたえられないと時間が限られていること、18人のコレクティブには1人の作家と違ってフィーなどの予算が足りないことなどを批判。
https://news.artnet.com/art-world/boss-turner-prize-statement-1967386

◎ギャラリー移籍ラッシュ
老舗ギャラリーのメトロピクチャーズが今年いっぱいで閉廊することからスター作家のシンディ・シャーマン、ゲーリー・シモンズがハウザー&ワースに移籍したのに続いて、ロバート・ロンゴは、40年付き添ったメトロピクチャーズからペースギャラリーに移籍。彼と密接に仕事をしていたセールスディレクターも一緒に移籍するよう。
https://www.artnews.com/art-news/news/robert-longo-pace-gallery-1234592650/

◎あるギャラリーをめぐるグローバルな動き
メキシコシティのキレのあるギャラリーだったLuluは創業者の一人クリス・シャープ(Chris Sharp)がLAでギャラリーをあけたことをきっかけに閉鎖する予定だったが、北京のX Museumが資金提供をして非営利のアートスペースになる。年4回の展覧会のうち3つはシャープが企画し、1つは中国人作家の展覧会に。とてもグローバルな動き。
https://news.artnet.com/art-world/mexico-city-hybrid-art-project-lulu-is-teaming-up-with-chinas-x-museum-and-become-a-satellite-1968514

アートマーケット

◎クリスティーズの売り上げは好調
5月11日のクリスティーズのオークションは21世紀イブニングセールと新しく企画されたもの。バスキアでは史上2番目に高額の100億円を超える《In This Case(1983)》や、18億円を超える「CryptoPunks」 NFTを含め総額230億円の売り上げと好調。コロナ禍でも富裕層がさらに富裕になったことが要因と考えられている。その他リネット・イアダム・ボアキエ(Lynette Yiadom-Boakye)など若手黒人作家のオークションレコードも何人も出て時代の変化も感じられるものに。
https://news.artnet.com/market/basquiat-christies-second-highest-record-1966135

◎サザビーズも売り上げ好調
5月12日のサザビーズのイブニングセールは、アン・マリソン(Anne Marion)コレクション、現代、近代の3つを計4.5時間かけたマラソンオークション。想定を超える総額650億円の売り上げ。モネ、ピカソ、ウォーホル、バスキア、スティル、リヒター、コレスコットなど。近年人気が急上昇しているサルマン・トア(Salman Toor)は予想落札額の11倍での落札。
https://www.artnews.com/art-news/market/70-4-m-monet-and-37-m-double-elvis-sothebys-597-m-evening-sales-1234592692/

◎アインシュタインの手紙がオークションに登場
世界で最も有名な方程式と言われるE = mc2が書かれたアインシュタインからシルバーシュタインに宛てた手紙がオークションにかけられている。自筆のE = mc2が書かれた手紙は世界に4つしか現存が確認されておらず、美術館が保有するもの以外ではこれが最後の私的所有されているものとのこと。予想落札額は5000万円弱だが結果がどうでるか。
https://artdaily.com/news/135628/Einstein-letter-with-world-s-most-famous-equation-up-for-auction-#.YJ7xnWZKi3K

◎若手作家4名を紹介
今週のNYの一連のオークションでは数多くのアーティストレコードが出たが、その中でも若手の4人ニーナ・シャネル・アブニー(Nina Chanel Abney、$990,000)、ジョナス・ウッド(Jonas Woo、$6.5M)、クレア・タブレ(Claire Tabouret、$870,000)、サルマン・トア(Salman Toor、$867,000)の紹介とマーケット分析を簡単にまとめた記事。
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-market-record-breaking-auction-claire-tabouret-salman-toor

おすすめの展覧会、読み物

◎パイクの大規模回顧展
ナム・ジュン・パイクの大規模な回顧展が、SF MOMAとテート・モダンによって共同開催。現在SF MOMAで10月まで展示中。すでに昨年テートとアムステルダムで開催済み。サンフランシスコの後、ナショナル・ギャラリー・シンガポールに巡回し、今年の11月から開催。アメリカでは20年ぶり、西海岸でははじめてのパイク展だという。作品数は200点以上。
https://hyperallergic.com/644520/sfmoma-presents-us-exclusive-retrospective-visionary-artist-nam-june-paik/

◎ヴィット・シュナーベルのロングインタビュー
画家で映画監督のジュリアン・シュナーベルの息子ヴィット・シュナーベルがチェルシーに3つ目のギャラリーをオープンした。半生を振り返るロングインタビュー。美大に行っていた姉に連れられてダッシュ・スノーやラッシード・ジョンソン、ダン・コーレンのスタジオに中学生時代から行っていた。15歳のときに、ダン・コーレンの作品を初購入して、展覧会の企画を持ちかけたが30歳になるまで待とうと断られたことなど逸話が豊富。
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-vito-schnabel-old-school-approach-art-dealing

◎約40年ぶりの対談
ボストン美術館で開催中のバスキア展に関連して、80年代初頭にコラボレーションしていたジェニー・ホルツァーとレイディーピンクの83年以来の対談。当時ストリートで活動していた女性はほぼ彼女ら2人だけだったという。2ページに渡り長いが、当時の様子が伝わってくる。
https://www.artnews.com/art-news/news/jenny-holzer-lady-pink-streetwise-feminisms-satanism-reaganomics-1234591793/

◎7人のアーティストの伝記
レオナルド・ダ・ヴィンチ、デュシャン、フィリップ・ガストン、ビューフォード・デラニー、フリーダ・カロ、リー・クラスナー、そしてルース・アサワの7人のアーティストの伝記の紹介記事。作品集だけでなく、たまには伝記も読もうかという気にさせる。
https://www.artnews.com/art-news/product-recommendations/essential-books-artist-biographies-123458433

Kosuke Fujitaka

Kosuke Fujitaka. 1978年大阪生まれ。東京大学経済学部卒業。2004年、Tokyo Art Beatを共同設立。08年より拠点をニューヨークに移し、NY Art Beatを設立。アートに関する執筆、コーディネート、アドバイスなども行っている。 ≫ 他の記事

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