公開日:2021年6月21日

バーチャルヒューマンimmaと13組のアーティストたち:DIESEL ART GALLERY「imma天」インタビュー

バーチャルヒューマンのimmaと国内外で活躍するアーティスト13組によるグループ展「imma天」がDIESEL ART GALLERYで開催中。本展をキュレーションした守屋貴行にインタビュー(PR)

imma(イマ)は、ピンク色のボブスタイルがトレードマークの、日本発・アジア初のバーチャルヒューマン。2018年のデビュー以来、これまでに世界50カ国、7000以上のメディアにて話題になった。現在Instagramのフォロワーは33万人、TikTokでは開始後すぐに20万人を超え、フォロワーは海外のセレブリティも多く、国際的な人気を誇るバーチャルヒューマンだ。2020年にはForbes Polandが発行するForbes Woman誌にて「Women of the Year 2020」にも選出された。

そんなimmaを題材にした初のコラボレーション展「imma天」が、渋谷のDIESEL ART GALLERYにて9月2日まで開催中だ。参加アーティストは、YOSHIROTTEN、河村康輔、吉田ユニ、トキ、Jun Inagawa、KIM SONGHE、Riyoo Kim、Amazing JIRO、岸裕真、MASAKO.Y、山田晋也、Kanatan、上岡拓也の13組。個性豊かなアーティスト、クリエイターたちが多彩にimmaを描き出す。

今回、本展をキュレーションしたAww Inc.代表の守屋貴行にインタビューを行った。Aww Inc.は、immaをはじめplusticboy、Riaといった複数のバーチャルヒューマンをプロデュースしているアジア初のバーチャルヒューマンカンパニーでもある。

会場風景 Photo: Joshua Helius

信じられるものこそが真実

immaは、日本で誕生したアジア初のバーチャルヒューマン。Instagramでそのアカウントを見れば、日々友人たちとセルフィを撮り、現代アートの展覧会に足を運び、アーティストに会い、話題のレストランで人気メニューに舌鼓を打つなど、気ままな日常の様子を見ることができる。バーチャルヒューマン=実空間には存在しない人物だが、いまだに実在すると認識するフォロワーも多いという、リアリティのある佇まいが印象的だ。

身長や体重、国籍、経歴などは一切非公開。明かされているのは、immaがバーチャルヒューマンということだけ。そんななかでこの展覧会は、13組のアーティストが思い思いに見せるimmaのイメージを通して、immaの実体に近づくことができるような企画になっている。

会場には、空や雲のグラフィックが基調のバーチャル空間を思わせる壁、そして13組の作家によるimmaの作品が壁、天井、床に計算されたように並ぶ。「天国」がテーマという空間と会場構成は、アートディレクターでビジュアルアートユニット「skydiving magazine」の一員としても活躍するアーティスト、村田実莉が担当したものだ。

immaをプロデュースし、本展のキュレーションを手がけたAww Inc.代表の守屋貴行は、「imma天」という展覧会タイトルの由来にもなった村田とのやりとりを次のように振り返る。

「最初はアーティスト参加しているYoshirottenさんと話してて、パッと浮かんだのが天国でした。その後、その世界を具現化するのに実莉ちゃんと話し、その世界感を広げていき、展覧会タイトルを『imma天』にしました。じつはこれまでimmaを語るうえで、日本にあるアニミズムの概念はずっとあり、その流れから他者は少なからず“象徴“や“神”などの宗教論を持ち出す人たちも多々いたんです。別に神とはまったく思いませんが、そういう他人から概念を踏まえると天国というのはしっくりきました」。

壁紙も什器も、会場すべてがimmaの世界観。これにはホワイトキューブでの展示、正当な美術展へのオルタナティブを示す意味もあるという。

「ファインアートに対するカウンターとは言い切りませんが、“こういう展覧会もありなのではないか”というのを見せたかったです。本展には、アニメ風の作品やインスタレーション、映像や陶器もある。それがごちゃっと並んだ時に、ホワイトキューブだと予定調和だし何か意図しない方向に勘違いされて見えるんじゃないかと思いました。あくまで展覧会はimmaの世界観を表したかったです」。

会場風景より、Jun Inagawaの作品群 Photo: Joshua Helius

そんなオルタナティブの姿勢は、アーティストの選び方にも表れている。例えばグラフィックから音楽まで、ジャンルを超えた様々な表現方法での作品制作を行うYOSHIROTTEN、コラージュアーティストとして数々のコラボレーションを展開してきた河村康輔、広告、CDジャケット、映像など幅広い分野で活躍する吉田ユニをはじめ、トキ、Jun Inagawa、KIM SONGHE、Riyoo Kim、Amazing JIRO、岸裕真、MASAKO.Y、山田晋也、Kanatan、上岡拓也。この13組はそれぞれがコマーシャルギャラリーに所属せず、SNSなどで自ら活動を発信し活動の場を広げるアーティストやクリエイターたちが多くを占める。これについて守屋は「今はギャラリーを介さずとも世界で作品を売ることができる時代。そういう今の潮流を体現する人を集めたかったんです」と話す。

immaは海外人気が高いというが、ヨーロッパやアジアなど、地域ごとの宗教観によっても受け入れ方が異なる。しかしどこでも共通するのは、20代は抵抗なくimmaを受け入れファンになっているということ。年齢があがるほどに「怖い」というような拒否反応も強くなっていくという。

「僕のまわりの20代は、リアルだろうがバーチャルだろうが面白いものは面白いみたいなとらえ方をする子が多い。そして、展覧会のステートメントにも書いているのですが、フェイクかフェイクじゃないかの尺度ではなく『信じられるものこそが真実』という感覚が強いように見えます。僕はこの言葉が好きなんです。なぜならそこには自分の判断基準があるから。みんなテレビも見なくなって、マスに操作されず信じる概念が結構変わっているのは僕にとってはすごく面白いです。つまり真実がどれかわからない時代になってしまったんですよね。そうなると自分の主観が大事ってことになります」。

会場風景より Photo: Joshua Helius

シンギュラリティとしてのimma

じつは、守屋はこれまでにも2019年にはソフィ・カルの映像インスタレーション作品《海を見る》で、渋谷スクランブル交差点をメディアジャックする企画、江之浦測候所でのチェリスト兼シンガーのケルシー・ルーのライブ企画など、ホワイトキューブにとらわれず、作品・アーティストと場所という異なるふたつの事柄を共鳴させ合うような企画を発表してきた。今回のimma天も、バーチャルとリアルの場の融合ということから、これまでの企画の延長にあることが感じられるものになっている。

13組のアーティストが浮き彫りにするimmaの存在。守屋はimmaを「リアルとバーチャルの境界にいる、あくまでひとりの女の子」と話し、その可能性を「無限」だと語る。

「メディアを通して自由にどんな表現でも達成できるのがバーチャルヒューマンなので、immaの可能性は無限だと思っています。プロデューサー的な立ち位置から話すと、バーチャルヒューマンは今後いっそう世間に認知され、そこで議論が巻き起こるはず。むしろ、僕としては議論を巻き起こしたいし、以前ヨーロッパで『人類を滅ぼす気か』と言われたことがありますがそのくらい批判されたいと思っています。じゃないと広がりが生まれませんから。今後、バーチャルヒューマンのシンギュラリティが訪れるとしたら、その象徴はimmaであってほしいです」。

2018年に生まれたばかりのimmaは、今後も世界規模でさらなる展開を見せていく。本展で、その未来の一端を予想してみてほしい。

会場風景 Photo: Joshua Helius

■展覧会詳細
imma天
会期:2021年5月22日〜9月2日
会場:DIESEL ART GALLERY

住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F


開館時間:11:30〜20:00(時短営業中。変更になる場合があります)
会場では作品とグッズが販売中。また「imma天」をオンライン上で体験できるバーチャルツアーが公開中。詳しくはウェブサイトをチェック。
https://www.diesel.co.jp/art/immaten/

野路千晶(編集部)

野路千晶(編集部)

Editor in Chief