1960年代、アメリカにおける美術表現は、グリーンバーグの批評理論に代表されるモダニズム的な美学を離脱する多様な動向の出現を見た。今回のレクチャー・シリーズでは、その中から、60年代後半より顕著となるいわゆる「コンセプチュアル・アート」を取り上げ、その中で写真が果たした役割を考えてみたい。初回は、コンセプチュアル・アートの年代記として基本的な文献の一つであるルーシー・R・リパード(Lucy R. Lippard)の『6年間:1966年から72年にかけての芸術の非物質化(Six Years: The Dematerialization of the Art Object from 1966 to 1972)』を参照しながら全体の流れを概観し、残りの4回をより焦点を絞った作家論にあてる予定である。