PGI八木清は1994年から10年以上をかけて、国境をまたがって極北に暮らすエスキモーとアリュートの村々を訪ね、極北の自然とそこに暮らす狩猟民の生活を撮影しています。旅を繰り返して撮影を続けるなかで、「極北の原野に点在するエスキモーの村々では、地の果てのような辺境の地であっても、西洋的な価値観や生活への傾倒が一様に広まり、伝統文化の大半が既に忘れられつつあることを強く感じる」と作者は語っています。現在、古老たちから昔の狩猟や生活のことを聞き記録に残したり、伝統文化を継承しようとする動きが活発であるそうですが、こうした傾向は、急速な時間の流れに対して彼ら自身が焦燥や違和感を抱いている表れなのではないかと作者は考えます。
自然界にはこのような人間の世界に流れる時の流れとは明らかに異なる、超然とした時間の流れや四季の移ろいがあるのも事実で、極北の広大で無垢な原野にたった一人たたずむ時、作者は同じ地球上でありながら異なる時間の流れというものが存在しうるのだろうか、と自問します。「エスキモーの村から一歩足を踏み出せば、繊細な光りに照らし出された淡い色彩が世界を満たし、かつて彼らの祖先たちが真理を見出した極北の自然が今も存在し、近代化された村に流れる時間と混和して、不可思議なリズムをかもし出している」と語る作者は、この『時間』という謎に満ちたものに対して、純粋な好奇の念を持つようになり撮影を続けています。孤独な旅のなかで味わうこの不思議な感覚は、作者を新たな極北の旅へと誘う原動力となっています。
展覧会では、極北を捉えたシリーズの第二弾として、カラー作品30余点を展示いたします。
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