近年のキャラクターペインティングからは想像もつかないが、90年代初頭の村上隆の作品と言えば、むき出しのFRPに白塗りされたタミヤの兵隊がトレードマークだった。ディスプレイ工房の手伝いをしていた村上はその経験から、日本の芯のメタファーというコンセプチュアルな対象物としてFRPを選んだのである。一方、FIRST IN QUALITY AROUND THE WORLDと、高々と謳いながら、アメリカを象徴するかのような赤/青地の白い星を掲げるタミヤのトレードマークに、アメリカの下でしか存在し得ない日本を見た村上は、その浄化を目論むかの如く、白く塗りつぶされた兵隊を素材として用いた。さらに村上は彫刻の重要な要素である台座を否定し、不安定性をエネルギーとすべく作品の足元にキャスター(滑車)を使用し、美術内美術としての理論武装を謀った。コンセプトのダブルバインド、トリプルバインドを象徴する「ポリリズム」と題されたこのシリーズが展示されます。