井筒俊彦(*)は1977年テヘランで開催された「文化間対話」をテーマとした国際シンポジウム(*)において"BEYOND DIALOGUE-A Zen Point of View-"と題した講演を行い、「(対話の)彼方での対話」(「Beyond-Dialogue」)について語りかけました。それは禅における「問答」を例に、私たちが信頼する「言葉」による対話が、実は対話の限界を生んでいるのではないかという、東洋的なテーゼの提出でした。言葉を捨ててありのままを見ることの重要性と、優劣や白黒をつけるという結論を出すことが対話ではないということ、そして「対話を続けること」の重要性を指摘し、注目されました。
芸術文化は、異文化間の摩擦の中からも、私たち人間に共通する深い問いかけや素晴らしい融合を生み出してきました。私たちはここに「On the Agenda of the Arts アートの課題」と題した対話の場を設け、今回はその第1回目の会議を、《異文化間の対話についての東京ラウンドテーブル2007》として開催いたします。2008年には、異文化の対話の成功例を様々な分野にまたがって紹介すると共に、多様性や異なる価値観を前提とする「異文化交流」について、一連のシンポジウムでも掘り下げてゆきます。
*井筒俊彦・・・1914-1993 言語学者、イスラーム学者、東洋思想研究者、形而上学者。20カ国以上の言語を習得したと言われる。ペルシア思想とイスラム神秘主義に関する数多くの著作で知られるが自身は仏教徒であり、晩年には研究の域を仏教哲学、老荘思想など東洋思想の域にまで広げた。
*1977年10月、Centre Iranien pour le Dialogue des Civilisationsがテヘランで主催した国際シンポジウム"L'impact p lanetaire de la pensee occidentale rend-il possible un dialogue reel entre les civilisations?".