ロニ・ホーン(Roni Horn)は1955年ニューヨーク生まれ。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインとイェール大学にて学びます。在学中の75年頃から本格的に作品制作をはじめ、初期の頃はミニマリズムに影響を受けたコンセプチュアルな立体作品を制作していましたが、90年代に入ると写真作品を中心に制作発表しはじめます。
”言葉を通じてビジュアルにたどり着く”というホーンは、写真、インスタレーション、ドローイング、テキストなど様々な表現形態を通じて、見るものに時間や空間、または人の経験や’存在、記憶、アイデンティティについて考えさせる作品を制作するアーティストです。
今回発表するシリーズ「This is Me, This is You」は1988年から2000年に渡り、ホーンの姪であるジョージア・ロイを撮影したシリーズです。壁一面グリッド状に並べられた48枚のジョージア・ロイのポートレートは少女から大人になる過渡期の様々な表情が写し出されています。そして、その壁の向かいにはミラーのように同じく彼女の48枚のポートレートが展示してあります。一見すると全く同じ作品が左右対称に飾ってあるかのように見えますが、よく見るとそれは数秒後にとられた違う写真なのです。
ホーンはただ飾ってある写真が作品ではなく、鑑賞者が作品を見る事によって初めて作品が成立すると考えます。鑑賞者が実際に展示空間にたち、作品を前にして、そのグリッド状に並んだ対の写真群が同じではないという事に気づく時間も含めて、この作品は成立するのです。