特集陳列「能「善知鳥」の面と装束」展

東京国立博物館

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能「善知鳥(うとう)」は初夏の越中の国(富山県)・立山と陸奥の国(青森県)・外の浜を舞台とする物語です。物語は、角帽子(すみぼうし)をかぶり、水衣(みずごろも)をまとった質素な姿の旅の僧が、立山を訪れる場面からはじまります。そこで旅の僧は「朝倉尉(あさくらじょう)」という能面をつけた憂いのある面立ちをした1人の老人に出会います。その老人は、「私は昨年死んだ猟師の亡霊である、どうか外の浜に遺してきた妻子に自分の魂を弔うよう頼んでほしい、私の着物の片袖を私の頼みである証拠として届けてはくれないか」と自分の衣の片袖を引きちぎり、旅の僧に頼みます。旅の僧が外の浜に着き、猟師の家を訪ねると、唐織(からおり)を着流しに着用した猟師の妻と、振袖の小袖を着用した男の子がいました。妻が亡き夫の着物を取り出してみると不思議なことに片袖がなく、僧が持ってきた袖とあわせてみるとぴったり合います。あらためて猟師の死を嘆く妻と子の前に、猟師の亡霊が現われます。その姿は、かつて旅の僧の前に現われた老人ではなく、生前、殺生していたために、立山の地獄に落ちてしまった陰惨な姿でした。猟師の亡霊がつけた「能面(のうめん) 痩男(やせおとこ)」の表情には、彼の苦悶(くもん)が刻まれているのです。亡霊となって妻子の目の前に現われた猟師は、かつて鳥のひなを殺してしまった罪のためにわが子の傍へ行くことがかないません。猟師の亡霊は生前の殺生を悔い、旅の僧に自分の魂を供養してほしいと請うのでした。

能「善知鳥」は『今昔物語集』にも所収される「立山地獄説話」と、『新撰歌枕名寄(しんせんうたまくらなよせ)』に見える「善知鳥説話(うとうせつわ)」とをあわせて創作されたといわれていますが、作者はわかりません。中世において猟師や漁師は殺生を生業とする者として、社会的な差別を受けていました。「善知鳥」はそのような概念に基づく人々の苦悩と古今を通じて変わらない家族への愛情を描き、現代の私たちにも強く訴えかけるものがあります。

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2008年06月17日 ~ 2008年08月03日

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