小笠原美環 「ひとりごと」

スカイ・ザ・バスハウス

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ドイツ、ハンブルグを拠点に活動する小笠原美環の作品はヨーロッパではパリのポンピドゥーセンター、スイスにバーガー・コレクションなど重要な美術館やコレクションに収蔵され、すでに高い評価を受けています。97年にドイツに渡って以来ほとんど帰国せずに絵画の勉強に打ち込んだ小笠原は、自身のホームベースであるハンブルグのトップギャラリー、Vera Munroにその才能を見いだされヨーロッパを中心に作品を発表するようになりました。
そのため、小笠原の作品はこれまで日本にはほとんど知られることなく、欧米の目の肥えたコレクターやキュレーターを中心にその卓越した表現力が注目されてきた経緯があります。

確かに小笠原の作品は同世代の日本人ペインターに見られるいくつかのカテゴリーのどれにも当てはまらないように見えます。同世代の日本のアーティスト達の作品には物語性のある情景を精緻な筆致で表現したり、時代の感覚、日本の文化の独自性を強調する方法論を用いる作風が多く見られます。
しかしながら小笠原の世界感は、それらのいずれの傾向とも違っています。

小笠原のペインティングの中では全ての要素が潔いまでに整理されています。
色調はグレイトーンが中心に注意深くコントロールされており、その中で光と陰の対比が印象的です。構図もごくシンプル、得意とする室内の風景の中ではバウハウスデザインのように整理された構図がその作品をほとんど抽象画に近いところまで簡潔化させ、人物を配した作品においても人物はまるでオブジェクトのように構図の中に配され、そこに躍動感はなく空間を構成するひとつの要素として何も語らず存在しています。

物語を語ることのない具象画、時間感覚の欠如と永遠性、静謐の世界。その背景には小笠原が好きだと言う19世紀のデンマークの画家ヴィルフェルム・ハンマースホイの影響を垣間みることができます。謎めいた室内画や女性の後ろ姿など、壮大な物語を語ることなく日常の風景に深い精神性をこめたハンマースホイの象徴主義の表現は小笠原の作品を読み解く上でひとつの鍵になるかもしれません。

また、やはり19世紀のドイツのロマン主義絵画を代表する画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画のもつ独特の光の感覚を、同じ北ドイツで制作する小笠原の光の解釈にみることができます。北ドイツの荒涼とした風景を描き、あくまでもその地の光の質にこだわったフリードリヒの濁りのない崇高な絵画はやはりハンブルグの光なしには成立しない小笠原の作品の燐として透明感のある空気に直接的ではないにせよ影響を与えている可能性があります。

「ひとりごと」と題された今回の個展では大小10数点のカンバス作品が展示されます。バスタブのふちに腰掛ける少女の姿、カーテン越しに淡い光が差し込む部屋、黒い服をきた少女の手と白い服の少女の脚、海辺の風景など、何気ない光景の奥深くに眠る凛とした精神性。
物語を語ることなく、カンバスに描かれた光景から招き入れられる世界への広がりは優れた絵画と向かい合うときに体験できる「絵画との対話」を実現させてくれるに違い有りません。

[画像:「Businesshotel」 (2008), oil on canvas, 140 x 120 cm]

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スケジュール

2008年10月03日 ~ 2008年11月08日

アーティスト

小笠原美環

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