銀座メゾンエルメス次回フォーラムの展覧会では、現在飛躍的に活躍している作家、名和晃平の新作を発表します。名和晃平(1975生)は、2000年に初めて作品を発表して以来、思わず手を触れたくなるような迫り来る素材感と、その完成された造形美で国内及び海外での活動も注目されています。2005年にはメゾンエルメスのウィンドウ ディスプレイをデザインしています。
名和の作品を語るにあたって、重要な概念は「表皮」と「セル(細胞)」です。代表作 「PixCell-…(ピクセル)」 シリーズでは、動物の剥製、スニーカー、楽器、玩具、果物のレプリカといったオブジェクトの「表皮」をそれまでとは異なるフェーズ(様相)へと変容させます。透明で無数のガラスビーズの膜は、作品と見る者の間に立ちはだかる新たな界面です。また、それは本来のオブジェクトの質感やリアリティーを透過する「セル」として、我々の身体にすり込まれた手触りの記憶や、そのオブジェクトに対する視覚の既成概念をも狂わせます。
今回の展覧会で名和は、今まで取り込んできたマテリアル(物質/素材)をさらに大規模に生成させます。タイトルが示唆する、リキッド(LIQUID)、ビーズ(BEADS)、スカム(SCUM)は、どれも「表皮」を変容させる「セル」 であると同時に、3つのフェーズを映し出す段階でもあります。リキッドは「セル」が液状の母体から沸々と生まれ出る過程であり、生成した「セル」がオブジェクトの表面に付着し媒介するのがビーズ。ビーズによる媒介がリミットを超えたとき、「セル」の残滓の塊はスカムへと膨張をはじめます。それぞれのマテリアルが独自の代謝を繰り返しながら作品の界面となり、さらに名和の卓越した造形感覚によって圧倒的な美しさを与えられるのです。
ひたすら脳だけを経由する情報の海のなかで溺れ、日に日に麻痺していく身体感覚。名和の作品は、我々を覆う皮膜を自覚させるところから始まり、網膜(視覚)や皮膚(触覚)といった生の皮膜を激しく揺さぶります。それは、実際にフィジカルな手作業でマテリアルに立ち向かう、名和の造形に対する身体感覚が注がれた、感覚を喚起する装置とも言えるでしょう。
[画像: ©OMOTE Nobutada、提供 Hermès Foundation]
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