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タイラー・スター 「Wallowing Series」

ギャラリー・エフ
終了しました

アーティスト

タイラー・スター
暴徒と化した群衆と警官隊。墜落したアメリカ空軍のジェット機。佐世保に寄港した原子力空母と抗議団体のバリケード。1974年生まれのアメリカ人アーティスト、タイラー・スターにとって60-70年代は、バックミラー越しの光景のように映ります。彼が焦点を当てるのは政治的モチーフそのものではなく、「行動」が引き起こす鮮烈なドラマです。

「世の中を修正しようとするヒロイックな努力がむしろ事態をこんがらがらせる」という構造に、彼は人間の本質の重要な側面を見ています。世の中の歴然たる問題を修復(しようと)するため、つぎはぎに再利用される歴史的出来事。スターは、「現在」に浮かび上がるその痕跡を辿り、彼自身を取り巻く日常の光景に落とし込みます。過激派学生たちの中に入り交じっているのは、街角の交番と警官、パチンコホール、自転車に拡声器を積んで選挙活動をする立候補者、建設現場の作業員たち。彼の暮らす東京の下町の光景であり、彼の携帯カメラがとらえる日常の断片です。

当代の出来事を「過去」という背景や衣装に置き換え、「過去の骨組みの上に立つ現在」を映し出すというアプローチは、歌舞伎やシェイクスピアなどの演劇表現にも見られます。スターにとってそれは、世の中の複雑性を観察し、理解しようとする試みなのです。

デザイン学校でイラストレーションを専攻した後、自作のエッセイとイラストを編集した雑誌を出版した経験から、スターは「刷り物」という媒体に興味を強めます。その後大学へ進み版画の美術学士を修め、ポーランドの芸術学院でエッチングの技術を学びました。2005年より東京芸術大学大学院で学び、日本の伝統的な木版画の研究に取り組んでいます。日本固有の繊細で上質な素材への敬意と、版画本来の持つ役割の基礎の上に、彼は絵画という手法を応用し、自らの世界観を描きます。

2009年8月、タイラー・スターは初の個展「Wallowing Series」において新作を含む絵画約15点と立体作品によるジオラマを発表します。会場となるのは浅草に江戸時代から建つ土蔵を再生したアートスペース「ギャラリー・エフ」。震災、戦災、都市開発の波をくぐり抜け、歴史の静かな証人として在り続ける一方、美術表現の場として現代へ向けた様々なメッセージの背景となってきました。タイトルの「Wallowing」 という言葉には、(快楽に)耽るという意味と、(泥沼のなかを)もがくという意味があります。スターの作品は、このような人間の二元的側面を考察し、過去と現在、日本とアメリカ、その双方の歴史と文化へ、ゆるやかに手を伸ばしています。

[画像:「Wallowing: Goodbye Enterprise」pencil, gouache, ganpi (2009)]

スケジュール

2009年8月7日(金)〜2009年8月30日(日)

開館情報

時間
12:0019:00
休館日
火曜日

オープニングパーティー 2009年8月6日(木) 19:00 から 21:00 まで

入場料無料
会場ギャラリー・エフ
http://www.gallery-ef.com/index.htm
住所〒111-0034 東京都台東区雷門2-19-18
アクセス東京メトロ銀座線浅草駅2番出口より徒歩2分、都営浅草線浅草駅A5出口より徒歩2分
電話番号03-3841-0442
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