冒頭のロケーションはアリスを奇妙で見慣れぬ世界に引き入れる。ルイス・キャロルがアリスを巡って書いた場所の多くはこの近辺である。土地の美しさが彼女を新しい状況と出会いに導いていく、それが狂った帽子屋のお茶会だ。物語のいくつかの局面は西洋を訪問中の日本の使節団の役と反響し合う。アリスは「なんて失礼な!(that's not very 'civil' of you!)」と三月ウサギに言うが、彼らの訪問の目的はヨーロッパの文明('civilization')を学ぶ事にあった。そうして物語は優雅さと野蛮さの狭間に地滑りして行く。写真作品もまたキャロルの理論と言語ゲームにおける対比の連続を視覚化しており、一連のドローイングは白井の仕事の幅広い感覚と想像力豊な制作過程を明らかにした。
-アリステア・ロビンソン(Northern Gallery for Contemporary Art) のテキストより抜粋