メルシャン軽井沢美術館アンドレ・ケルテス(1894-1985)は、20世紀前半にモダニズム写真の先駆者として活躍した写真家で、ブラッサイやアンリ・カルティエ=ブレッソンなどその後に続く著名な写真家に大きな影響を与えました。ケルテスの作品の特長の一つとして挙げられるのはその巧みな構図で、俯瞰(ふかん)する視点や、明確な直線と曲線、そして、光と影のコントラストによって組み立てられた作品は今もなお私達の目に新鮮に映ります。一方、明晰でシンプルな画面は一見、情感を抑えられているように見えるものの、決して無機的ではなく、ケルテス独自の詩情にあふれ、彼がカメラのシャッターを切る瞬間、ごく身近にあるありふれた街角、人物、静物などの日常的な存在は芸術に昇華するといえるでしょう。ハンガリーの首都ブダペストで生まれたケルテスは、パリ、そして、ニューヨークと移り住み、それぞれの街を舞台に、91歳で亡くなるまで精力的な制作活動を続けました。
ケルテス没後25周年を迎えた2010年9月から、ジュー・ド・ポーム国立ギャラリーで始まった大回顧展は、スイスのヴィンタートゥール、ハンガリーのブダペストを巡回し、欧米を中心にケルテスの作品への評価が再び高まっています。ケルテスの作品のネガとスライド、そして書簡などの資料は、彼自身の意思により、亡くなる1年ほど前にフランス政府に寄贈され、現在はジュー・ド・ポーム国立ギャラリーによって管理されています。
本展は、フランス文化・コミュニケーション省建築文化財メディアテークの特別協力のもと、パリにあるジュー・ド・ポーム国立ギャラリーによって企画されたもので、フランス政府が所蔵するネガの中から、189点の写真作品を通して、初期から晩年に至るまでのアンドレ・ケルテスの世界をご紹介いたします。
[画像:「エッフェル塔の影」(1929)]
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