表参道画廊『「松岡正剛の書棚」という本を作ります。ついては撮影をお願いしたいのですが、場所は、2万冊を超える本が並ぶ松丸本舗です。ただ本がわかるように撮ってほしい』という依頼を「中央公論」編集部から受けた時、これは普通の撮影とは違うことになると思った。なぜならあそこは特別だからだ。
書棚のある「松丸本舗」は、迷路のような空間構成、光源、色彩、考え抜かれた書棚のかたち、選ばれた本、書棚への本の入れ方、並べ方……。下見させていただいた時から、全てが他のどの書店にも似ていない型破りの空間に抗いがたい魅力を感じた。
当初はその雰囲気をいかにして伝えるかがこの撮影の鍵となると考えていたが、「本の背表紙の文字が全て読めるように」との編集部の特別な意向が伝えられた時に、「“雰囲気”を伝えるだけでは、全く不十分なものになってしまう」と強く思った。そこで、撮影は2日ほどで終わると企画当初に編集部から伺っていた話は白紙に戻し、書物と書棚一つひとつに向かって愚直に対峙していこうと決めた。結果として深夜の撮影が3カ月つづいた。
書棚の一つひとつに向かい合うとは、いわば松丸本舗の全容を「解体」していく作業だ。そうして写真によって解体された部分をあらためて構築してみると、そこにもう一つの「松丸本舗」が現れてきた。それは、解体図でもあり全体図でもある。設計図でもあり完成図でもある。そして実物の“Duplicate”でありながら「松丸本舗」の別の相貌を確実に捉えたと思う。
作品は松丸本舗の核心部分を成す本殿1から7まで全ての書棚を展開し、被写体の臨場感を細部から全体まで一望できるという、写真のネイチャーを最大限に発揮した大判のものとした。また一冊も余さず撮影し得たことで、いわば本殿の「ビジュアル総目録」ともいえるかもしれない。
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