ベイスギャラリー本作品は「チョルス」と「ヨンヒ」という朴正熙政権時代の教科書に登場し1990 年代の半ばまで用いられ た少年、少女を通して表現されている。
日本で言えば太郎と花子とでも言えばいいのだろうが、この2 人は、子どもたちのバイブルともいうべき 教科書の登場人物として、また疑いを入れさせぬイメージのアイコンとして、多くの国民に親しまれてき た。オ・ソックンはその教科書の形式とアイコンを借りて、新たな教科書を作ろうと試みた。 作品は知人たちの記憶の中で格別忘れられないシーンを題材にし、それを再現したものだ。そのシー ンは個人的な記憶と言いながら、どこか見る夫々は自分の記憶と重ね、時には国全体を覆う記憶にまで 及んだりもする。 更に聖書にも似たかつての教科書の曖昧さや、虚妄を皮肉にも暴いていく。
植民地・朝鮮戦争・南北問題・独裁政権、色々な国家の問題を抱えてきた韓国の中で教科書のアイコン に多くの役割を担わせてきた。敢えてそういうアイコンに仮託し、個人の記憶とは何か?それが実は個 人に留まらずもっと広がりがありはしないか?現在の韓国のアーティストならではの問いと懐疑に満ちた 作品は、私たちの記憶の由来に対しても揺さぶりを掛けてくるようだ。
本展は2010 年暮れから2011 年始めに掛けて九州大学で開催されたグループ展「おとなりさん」に出展 されたものである。東京では初の個展となる。
[画像: The Text Book (Chulsoo & Younghee) p277 (2008) Digital c-print 100 x 124 cm]
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