ニコンプラザ東京故郷を失うことは、自分を失うことなのだろうか。中国南東の山間部に異様な建物が点在するエリアがある。外界を拒絶するようにそびえる土壁。一歩足を踏み入れれば100部屋はあろうかというほどの猥雑な集合住宅が現れる。
黄河中下流域から戦乱を逃れてきた「客家人(はっかじん)」たちのこの住処は客家土楼と呼ばれ、世界遺産にも登録される歴史的建造物だ。1700年もの歴史を刻むこの建築群には老人の姿が目立つ。中国の発展は、人里離れたこの山間にとっても他人事ではない。都市部へと出稼ぎに行き、都会の生活に浸った若者たちは、もう客家土楼に戻ってこない。主をなくした住処は、中国の成長と反比例するように急速に荒廃しはじめている。進化とは、時に物質的な犠牲をともなうのかもしれない。しかし、歴史が年輪に刻まれるように、受け継がれなければならないものもあるはずだ。それこそが、今のわれわれ自身を形づくるものなのかもしれない。作者はその思いを本展のタイトルに込め、世界遺産「客家土楼」と、そこに今なお住み続ける人々を撮影し続けた。古代中国の王族の末裔として華僑の1/3を占めるともいわれる客家人。消えゆく住処に彼らは何を思うのだろうか。そして、私たちに何を語りかけるのだろうか。カラー45点。
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