「20世紀が他のどの世紀よりも芸術家の数は無茶苦茶に多く、それはモダン・アートの本質には無関係に、時流に乗って虚名を流し、美術品売買の利欲と無責任、大部分の新聞の無批判によって促されまがいもの(nonart)が本物(art)を圧倒しているどころか、本物とまがいものとの間の限界は見分け難いのだとか、こういう限界は根本的にできないものなのだ、と説かれさえしている。」と H.ゼーデルマイヤーが嘆いてから50年以上が経つ。実際、今日の市場化社会では、ゼーデルマイヤーの嘆きは現実となり、限界や境界は撤廃されるべきものとして、あらゆるものが art 化されている。ラビリンスとは、ギリシャ神話で、クレタの王ミノスが半獣半人の怪物ミノタウロスを閉じ込めるために名工ダイダロスに命じて造った巨大な迷宮であるが、ここでのラビリンスは、artとnonartが混在する今日の芸術の迷宮世界であり、また美術館という空間でもある。半獣半人のミノタウロスは、artとnonartの混ざりあった今日の生きものとしての現代美術である。