日本の抽象芸術の先駆けである斎藤義重が、独自の教育理念を具現化させた東京芸術専門学校(Tokyo School of Art = TSA)。その卒業生有志が1998年以来ほぼ毎年開催するグループ展が、「表現される現在」です。2009年、メンバーは「ゼロイスト」をテーマに掲げました。1950年の斎藤作品題名にちなみ、「ゼロ」から思考するということを、表明したものです。昨年は、発表の場を東京から仙台に移し、新たな出会いと展開を模索しました。そしていま、人間の想像をはるかに凌駕する力が社会に取り返しのつかない傷を負わせ、誰もがいつ解決するとも知れぬ事態から逃れられないままです。「ゼロイスト」という言葉も別の重みをもって、作者たち自身に投げ返されてきたといえるでしょう。