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中川トラヲ 「Plastic Art」

児玉画廊|白金
終了しました

アーティスト

中川トラヲ
緑色の絵の具を含ませた筆を、キャンバスにルーズに運ばせる事によって出来た曖昧な模様の中に、森が現れる事。または偶然描かれた水色の色面に浮かび上がる川、湖。再現出来ない偶然の形。それらを重ねていく事でイメージはさらに広がっていき、キャンバスに差し込む窓の光やパネルの木目ともイメージが重なり一枚のタブローになる。
(中川トラヲ)

このステートメントにあるように、中川の作品は常に偶然から次第に浮かび上がる情景をそっと捉えていくように描かれます。昨年の個展「ポストスクリプト」(児玉画廊|京都)では、薄いベニヤ板上に描き、「厚み」を排除した一連の作品を展示しました。厚みを極力感じさせないように徹する事で、ペインティングからイメージのみが抜け落ちて壁面に焼きついたかのような印象を与え、これまでの「絵画」としての見え方や、支持体としてのキャンバスやパネルに依存して成り立つという形式から逃れることで、イメージが如何に存在し、表象されうるのか、という根源的な疑問を自らに問うたのです。その思惟を象徴する作品として、画像データを故意にクラッシュさせたイメージを抽象的な色面構成としてプリントした作品をペインティングと並列して見せていましたが、このぜいぜい数キロバイトのデータでしかないものが作品として等価に存在するという事実は、制作者として理解しつつもなぜか納得し切れない問題意識を中川自身の心に残しました。

「Plastic Art」とは本来造形美術を意味する言葉ですが、中川はそこに「Plastic」=作り物の、見せ掛けだけの、偽物の、というニュアンスを重ねてイメージしています。これまで、具体的なモチーフを排し偶然からイメージをたぐり寄せるような手法に徹して、何もないところから、何処にもない情景を作り続けてきた中川ですが、結局、自身の作品が何かを写し取る、あるいは模倣するものでしかない、と自棄してしまったということなのでしょうか。そうではなく、今目の前にある「絵画」としての作品は「Plastic」である、と敢えて言い放つことによって、自身の作品を「絵画」たらしめている本質のような何かを相対的に捉えようとしているように思えます。また、そうすることによって、先述した絵画の意義と価値に対する疑念を払拭せんとする極限的な覚悟を示しているのです。

[画像:中川トラヲ 「Plastic Art」(2012)]

スケジュール

2012年4月14日(土)〜2012年5月19日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttp://www.kodamagallery.com/nakagawa201204/index.html
会場児玉画廊|白金
http://www.kodamagallery.com/
住所〒108-0072 東京都港区白金3-1-15 1F
アクセス東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅より徒歩8分
電話番号03-5449-1559
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