終了した展覧会・イベントです

小泉圭理 + 友政麻理子「国民の祝日」

TALION GALLERY
終了しました

アーティスト

小泉圭理 、友政麻理子
ペンと紙が衝突してドローイングが生まれ、男と女が衝突して新しい生命が生まれる。そこに大きな違いはない、と小泉圭理は述べている。キャンバス自体も、木の棒が布でくるまれ、または布が木の棒で支えられ出来ているように、相互にまぐわり交接している。そこに絵筆が突き立てられ、新しいかたちが生まれる。つくることと交わることの同型性。小泉にとっては、紙に絵が描かれること、あるいは絵画が壁にかけられること、2次元平面と3次元空間の諸関係の問題も、ユニバーサルな空間と事物の問題というより、一回かぎりの出会いと交わりなのである。
小泉の作品にしばしば登場する、先の尖ったものや、丸みを帯びたイメージなどは、それぞれに男性性や女性性の隠喩、より直接的には性器の変形として読み取ることができる。そこに精神分析学的な性愛の再演や代行、あるいは古事記の国生みの記述などに見られるように、神話的想像力との類縁性をみることは難しくない。しかし、小泉の描くものは、マッチョなシンボリズムやシンクレティックなイメージの披瀝とは、明らかにかけ離れている。慎ましい色とかたち、そしてイメージの平面性を突き抜ける奔放さ。そこにはイコノロジカルな読解の及ばない、今日的な性愛関係の屈折と象徴秩序のねじれが表れている。この21世紀初頭の10年間で、日本社会における若年層の性愛関係、性をめぐるイメージとその欲望のされ方は、劇的に変化した。この大きな変化のひずみに、小泉が筆を突き立てるべき隙間がある。
本展「国民の祝日」で小泉は、大型・中型のペインティング2点、ギャラリーの構造的特徴を利用した半立体作品2点、そしてドローイング作品3点と、すべて新作によって展示を構成する。抑圧が抑圧たり得ず、他者の欲望を欲望できない今日の状況にあって、新たなセクシャリティの探索ともいえる小泉の表出に、ぜひご期待ください。

友政麻理子は、映像や写真を主に用いたインスタレーションによって、フィクションとドキュメンタリーの合間を縫う、ささやかな物語の解体と再生を提示する。日常的な「記憶」や「まなざし」のサンプリングと編集を繰り返し、ときに鑑賞者を参加者として巻き込むドラマトゥルギーの対象となるのは、家族のような親密な相手との会話や、見知らぬ他者とのコミュニケーションを図ることで生まれた、自己投影的なストーリーの断片である。映像インスタレーションやパフォーマンスとしても展示される作品『お父さんと食事』では、「いただきます」から「ごちそうさま」までの間だけ親子になるという約束をして、友政は自分の父親くらいの年齢の、見知らぬ男性と食事をする。シナリオもなく、相手がどんな人物なのかも知らないまま、「親子」というあやふやなイメージによって会話はつながる。そのぎこちなさや居心地の悪さとともに、偽の親子と本物の親子、家族とそうでないものとの境界の不確かさを浮き彫りにしている。
また、『お父さんと食事』が行われた部屋のテレビには、映像作品『お父さんごっこ』が流れている。複数の人が軍手人形をつけた両手を使い、個々人の体験に基づく父と子の会話を再演する映像は、まるでバラバラな会話が一つの家庭で起きたことのように感じられ、全ての参加者が語る父親がある固有の一人であるかのように錯覚する。友政自身は、自らの制作手法について次のように述べている。「私の制作で、人と人の間に様々な『枠組み』や、『型』や『フレーム』を投げ入れるという方法をとってきた。その枠組みや型は、『家族』や、『ごっこ』や『物語』といった、ある意味相手の一部分を拘束するようなルールだったり『まなざしをむける』というぐらいのささいな方法であったりもした。関係に枠組みや、型が投げ入れるたりことで、枠組みからはみ出すような、何ものかがあたりを漂いだすのを感じることができる。そのようななにものかを導きだすために、こういった方法をとってきた。現れるものはいつも何気なく、普段なら気にもとめないような事柄だ。」
本展「国民の祝日」では、盆踊りを題材とした新作映像作品と、歩き方の型を基にして不在の人物のものまねをし、その姿を通してコミュニケーションをとる新作映像インスタレーション、そして友政の筋肉トレーニングや祖母のリハビリ運動の残像によって「虹」のイメージを形づくる写真作品3点を展示する。また、映像作品『お父さんと食事』がイタリアでの「Videozoom:Giappone–Reframingthe Everyday」展で展示された際の再編集版を展示する。親密でありながら遠く離れていて、見知らぬ他者でありながら自分自身でもあるような、そうした不在の存在と交信を図ろうとする友政の一連の作品世界を、是非ご覧ください。

ギャラリートーク+スペシャルパフォーマンス
「触れた手が、明らかに小刻みに、ぷるぷると」
日時 2012年2月11日(土) 19:00-21:00
会場 TALION GALLERY 台東区谷中3-23-9
定員 30名 要予約 ※定員に達し次第予約を締め切らせていただきます。
入場料 ¥500
参加者 小泉圭理、友政麻理子、奥村雄樹(美術作家)、佐々木勇貴(美術批評、作家)
    *友政麻理子による参加型パフォーマンス実演予定
予約 件名を「2月11日ギャラリートーク予約申込」とし、
1.お名前
2.電話番号
3.参加人数
をご記入の上、info@taliongallery.com までメールをお送りください。折り返し、確認のメールをお送り致します。

*ご予約いただいた方には、小泉圭理によるアーティストジン「ブックス」を贈呈いたします。

[画像: 友政麻理子 トレーニング -And then, we will climb the rainbow- 2010 Photograph 254 x 305mm]

スケジュール

2012年1月14日(土)〜2012年2月11日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、火曜日、祝日

オープニングパーティー 2012年1月14日(土) 00:00 から 00:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttp://taliongallery.com/jpn/current
会場TALION GALLERY
http://www.taliongallery.com/
住所〒171-0031 東京都豊島区目白2-2-1 B1F
アクセスJR山手線目白駅より徒歩6分、東京メトロ副都心線雑司ヶ谷駅2番出口より徒歩2分
電話番号03-5927-9858
関連画像

各画像をタップすると拡大表示します