終了した展覧会・イベントです

「影に吠える」展

AI KOWADA GALLERY
終了しました

アーティスト

秋山幸、伊藤雅恵、問谷明希、村岡佐知子
自分の視野や心象風景は、他者と完全には共有できない。わたしたちはこの当たり前の境界を、無意識に了解して日々を過ごしている。例えば昨日見た夕焼けの美しさを人に伝えようとする時、物理的に視界を切り取る写真にも、想像力を引き出す文章にも限界があるだろう。絵を描くこともまた、その境界に挑む行為なのだと4人の絵を前にして改めて思う。
伊藤雅恵はこれまでの抽象性をひそめ、自身や近しい友人をモデルに、何かに追われているような鬼気迫る形相や、大地を踏みしめ颯爽と歩く凛とした女の子が見せる、生命力溢れる一瞬のきらめきを、ほとばしるような筆致と極色彩で画面にとどめた。訪れた北欧の風景を描いた問谷明希は、画面に様々な質感をもたらすため、自ら現地で撮影してきた写真プリントを用いたコラージュを下絵に、自らが包まれたやわらかな北欧の光そのままをキャンバスに染み込ませるように丁寧にうつしとる。
自由な鑑賞を促したいという村岡佐知子は、様々にイメージを結びやすい黒で覆った画面に色の粒をしのばせる。まぶた裏に浮き出る強い光の残像のまたたきや、宵闇に浮かぶ星屑、ネオンサインに彩られた都心の夜景など、鑑賞者の心象風景とゆるやかにつながってゆく。
更紗やテキスタイルに登場する動植物や文様のなかから選びとったモチーフを、陶芸の呼び継ぎのように画面上に大胆な構図と鮮やかな色彩を用い、足下の日常に繋がる事物をとらえては物語から削ぎ取って再構築する秋山幸の絵は、見ているうちに一幅の絵巻物を読んでいるような感覚にとらわれる。
2次元に描かれた4人それぞれの心象風景に、誘われるように呼び覚まされたわたしたちの心象風景という層が重なった時、3次元の物語として新たな命を吹き込まれ動き出す。
影の向こうに恐怖心むき出しで吠えたてるのか、影の向こうにいるかもしれない仲間に呼び掛けるのか。この不安定な世界という物語のなかで生きる術を4人に試されているのかもしれない。

脇屋 佐起子(アートライター)

スケジュール

2012年6月16日(土)〜2012年7月14日(土)

開館情報

休館日
イベントにより異なる。イベント期間以外は事前予約制

オープニングパーティー 2012年6月16日(土) 18:00 から 20:00 まで

入場料無料
会場AI KOWADA GALLERY
http://www.aikowadagallery.com/
住所〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 211号室
アクセス東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩3分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、JR秋葉原駅電気街口より徒歩11分
電話番号080-4415-8322
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