EUKARYOTE(ユーカリオ)今回は香月恵介にとってピクセルペインティングの出発点とも言える、クロード・モネの「睡蓮」を引用したシリーズを全て新作にて発表する機会となります。「Les Nymphéas」に出展される作品は、ピクセルペインティングの手法:ディスプレイによる「睡蓮」図像の発光をアクリル絵の具の塊として置き換え描き起こされており、鑑賞者の眼前に浮かび上がる「睡蓮」の水面のイメージは、タブローへ近づくごとに、緻密に分別・混色され並べられた RGBの絵の具の粒によって雲散していきます。それは実像とは言い切れないディスプレイ越しの移ろいゆくイメージを、自身のものとして日々認識し経験する現代の私たちの認知や概念そのものに揺さぶりを掛けてくるかのようです。印象派の巨匠・モネによる「睡蓮」の制作から1世紀を経た今、印象派絵画は毎年のように展覧会 が行われ、美術教育の基礎となって人々に親しまれており、当時の時代背景と相まってもたらされた新しい視覚/色彩理論は私たちの認知に対して知らず知らずのうちに根付いているといえるでしょう。そして、現代の視覚媒体を通しながら視覚と光の関係性を絵画の技法・文脈上で表現し続ける 香月にとってもまた、画面上のナラティブな要素をあえて排除し、戦略的に選択された制作モチー フである理由として「睡蓮」は強い意味を持ちます。本展「Les Nymphéas」は、今現在ディスプレイに映る虚像さえも、当時印象派の画家たちが見てい た水面に映る風景と同じように光と共に作用して、時に私たちの感情を動かしながら知覚を拡張さ せつつあること。また、ピクセルペインティングが鮮やかに暴き出すイメージと物質といった絵画 の持つ両極性や、鑑賞者によってその体験や感情すら流動的に変化していくという古来から変わらない絵画そのものの魅力を改めて感じられる機会となるでしょう。
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