エスパス ルイ・ヴィトン東京このたびエスパス ルイ・ヴィトン東京は、アメリカ人アーティスト、ダグ・エイケンによる没入型インスタレーション《New Ocean: thaw》を紹介する展覧会を開催いたします。本展は、これまで未公開のフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品を東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウルのエスパス ルイ・ヴィトンで展示する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環であり、国際的なプロジェクトを通じて、より多くの人々に所蔵作品に触れる機会を提供することを目指しています。ダグ・エイケンが初めに学んだのは雑誌のイラストレーションでした。1990年代中頃から取組みはじめた映像制作は、ポップアートのイメージから大きくインスピレーションを受けたものでした。時には映像から離れ、写真や彫刻インスタレーションに的を絞ることもありますが、エイケンの作品では、そこかしこに置かれるスクリーンが際立った特徴となっています。しかし、編集と空間の活用に注目する中でこそ、エイケンは単純な枠組みを超えて、根本にある知覚概念に向き合います。彼の映像作品には、20世紀の実験映画制作の痕跡と、物語や表現を超えたより幅広いアプローチが見られます。さまざまな支持体に投影され、音と連携し、時には空間に散りばめられるエイケンの映像は、単純な視覚的知覚の境界を超えた、ほぼ身体的ともいえる感覚特性を帯びます。
エイケンの多くの短編映画やインスタレーションの中心を占める人物像は、流れの構成や、より幅広い舞台装置の構成においてその機能を発揮します。風景はエイケンが好むもう1つの題材であり、新たな種類の自然主義の要素が強く見られます。テクノロジー、エンターテインメント、コミュニケーションのコードに熟達したエイケンの作品は、「見えない風景」の描写を模索します。それは、移動、磁気変動、情報、そして周波数に深い影響を受けた景色です。
《New Ocean: thaw》では、抽象化の一歩手前とも言えるイメージが万華鏡のようにめくるめく映し出されます。そこに見えるのは、アラスカの景色、その空、解けゆく氷河です。自然の広大さに関連して生じる、ロマンティックな感情に迫るこの作品の投影形式(ほぼ半円形をなすように配置された3面スクリーンを2組設置)は、19世紀のパノラマ絵画を彷彿させます。しかし、エイケンが広大さの詩情を新たな視点で捉えている今この時は、環境の大惨事が際立つ21世紀の夜明けです。固定したイメージ(氷)であると同時に、動くイメージ(水)でもあるこの作品は、写真と映画の間にあると言えます。しかしこの作品において最も困惑を生じさせる中間域は、自然と人為の間の曖昧さです。太陽は、レンズによるフレア現象や色収差を呈して崩れ散乱する一方、氷河の音は編集され、電子音とミキシングされています。
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