まずExihibitionプログラムで見逃してはいけないのは、美術ジャーナリストであり、最近では作家活動も行っている村田真によるビジュアル構成「現代美術に現れる食のイコン」。前回は「絵画にあらわれる食のイコン」という切り口で、先史時代の洞窟画からウォーホルのキャンベル・スープ缶まで「食」にまつわる複製画による構成を行ったが、今回は以降のオブジェ・インスタレーション・パフォーマンスの領域を中心に扱っている。すなわち、このビジュアル構成ひとつだけでプチ<食と現代美術>展。正統派「食とアート」作品はここで全て味わった気分になれるはず。
一方で、奇妙な形をしたリンゴやクマの彫刻などを用いたインスタレーションで、虚構と現実との間にねじれを提示する雨宮庸介や、戦闘機や軍艦の模型にチョコレートをかけたオブジェを用いて写真作品を制作しているおおば英ゆきのように、モチーフや素材に身近な食品を用いつつも、恐怖にも似た非日常的な世界観を提示する作品があるのは意外性があって面白い。
一般公募による「BankART Market」では、美術作家だけではなく、建築家からフードショップまで様々な出品者がフードのケータリングや食に関する作品を展示・販売しており、その名の通り賑やかな「市場」となっている。
コンビニ弁当の「コピー」を作品化しているアーティスト飯田啓子や、地ビールのラベルデザインなどでアーティストとコラボレーションを行う横浜ビール(株)などが出展している。
プログラムはBankART周辺地区にも広がる。「横濱芸術のれん街」では、BankART周辺の関内関外地区の飲食店に、作家が作品を挿入、設置。BankARTにも程近い海岸通のカフェ「HANA-YA」では、パンを用いた作品を制作する大橋渉が「臨港カフェー」をテーマに壁画ならぬパン画を展示している。時間が許せば、全24箇所の参加店を回りたい。
その他にも、ワークショップやパーティーなど様々な関連イベントや、横浜の食にまつわる記事やインタビューを展覧会関連資料と共にまとめた書籍『美食同源』も必見。より多角的な展開を見せる<食と現代美術>を楽しみたい。
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto