プリントされた10数種のデジタル画像は荒く、モザイク状になってしまった風景に迫ることは難しい。よく見れば、その一部にはピクセルひとつづつに文字を入れ込んだ一文のテキストが合成されている。画像とテキストを同列に扱う、ということらしい。それではそのかたわらで流れているラジオの音声は?写真や展覧会について、作家とその知人が語りポッドキャスト配信したものだというが、その内容は脱線しがちでとりとめのない印象を与える。荒いデジタル写真や、小さくて読みにくいテキストと一緒だ。
それではU字溝(駐車場で車の後輪にしかれているあれ)は?実はその微妙な位置は、上に立ったときに、ギャラリーの外を流れる多摩川の景色がよく見える場所だ。
何か特別なものを見ているわけではない。しかし、自分の身の回りを取り囲んでいるものに対して少しだけ意識的になる。そういった「行為」の集積がこの展示なのではないだろうか。しかしそれこそが正に「写真的」行為であることには間違いがない。U字溝にのって「多摩川」を見ながら、ふとそんなことを考えた。
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto