第1会場ハウス オブ シセイドウ1階の展示では、銀座で始めてアール・デコを建築に取り入れた資生堂竹川町店(1928年新築)に関連する資料、建物に設置されたステンドグラスの窓、モザイクタイルのレリーフなどが展示されている。またアール・デコの精神を取り入れた資生堂のプロダクトやグラフィックも展示されており、資生堂スタイルの中に、アール・デコがどのように浸透してきたのかを見てとることができる。
2階では、同時期以降に中国の上海で制作されたアール・デコの家具や調度品が展示されている。これらは西洋のアール・デコとは異なり、控えめな装飾と機能美の中に、中国の伝統性も見出すことができるものだ。解説のひとつには、16世紀に中国から西洋へ多く輸出された、簡素で幾何学的なデザインの家具が、20世紀フランスでのアール・デコの源流となった説がある、などといった内容が記されており、これをひとつの事実だと仮定すると、上海で再解釈されたアール・デコの展開は非常に興味深い。
また、一級建築士であり、写真家、紀行作家でもある稲葉なおとが、アール・デコ様式を取り入れた上海の4つのホテルを撮った写真作品も見ることができる。このシリーズ作品は、第2会場である資生堂ギャラリーでも展開され、パリ(フランス)、ロンドン(イギリス)、ルツェルン(スイス)など計11都市での作品が全4回に分けて展示されるそうだ。
アール・デコをテーマとした展覧会はしばしば見ることができるが、このような「都市」という切り口は意外に少なく、違った視点で楽しむことができる貴重な機会だと言えるだろう。
写真(上)-資生堂竹川店(化粧品部) ステンドグラス(20世紀初頭)
写真(下)-和平飯店 上海(中国) 撮影:稲葉なおと
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto