公開日:2007年6月18日

『球体写真二元論 細江英公の世界』展

細江英公と土方巽、細江英公と三島由紀夫、細江英公と大野一雄…。本展覧会で強烈に印象付けられるのは、細江の卓越した写真技術はもちろんのこと、被写体との出会いも挙げられるであろう。写真において外すことのできない側面の一つが、この写真家と被写体との関係である。

荒木経惟と陽子、アルフレッド・スティーグリッツとジョージア・オキーフ…。これらはいずれも、恋人・夫婦関係がそのまま写真家と被写体の関係になっており、その対でしかもう考えられないほどの強い結合力を発している。他に、ロバート・メイプルソープも細江と同じように肉体への飽くなき探求心を持って、写真を撮影していたが、幸か不幸か彼には運命的な被写体が自分自身以外にはいなかった。筋骨隆々の黒人男性やロック歌手パティ・スミスがある程度有名な被写体ではあったが、それでもやはり彼のセルフポートレイトが鮮烈な印象を与える。ラバースーツ姿で挑発的なポーズを撮ったり、マシンガンを抱えて立ったり、右上半身だけが画面の端から現れ、手を伸ばしていたりするような若かりし頃の写真に始まって、髑髏のついた杖を持った晩年の写真で終わる。そこにあるのは出会いではなく、唯々自身の存在だけである。

そうした意味で、細江は被写体との運命的な出会いを何度も経験している数少ない写真家なのかもしれない。本展覧会は「薔薇刑」「鎌鼬」などの写真集によってセクション分けをしているが、それは同時に被写体で分けているとも言えよう。ただ写真を見るだけではなく、その被写体との「運命的な出会い」を追体験する。そんなことを感じさせる展覧会であった。

Bunmei Shirabe

Bunmei Shirabe

Graduate student of Aesthetics - Tokyo University 1980年生まれ。写真、球体関節人形(ハンス・ベルメールなど)の研究。今現在、<a href="http://www.pg-web.net/index.html">photographers' gallery</a>中のoff the galleryにあるRevised Editionにて執筆中。またブログ<a href="http://d.hatena.ne.jp/BunMay/">「入院(完了)生活」</a>にて毎週日曜に写真集批評を継続中。