公開日:2007年6月21日

「65億人のサバイバル — 先端科学と、生きていく」展

昨年10月末から約3カ月間、お台場・日本科学未来館にて展覧会「65億人のサバイバル」が開催された。現在65億人が住むといわれる地球上で、このさきの未来を最新テクノロジーを駆使しながら生き抜く術を展示を通して学ぶというもの。

フード/道具/住環境/エネルギー/コミュニケーションの5つのテーマに分類された会場には各エリア毎にコンテナブースが配され、食料問題、エネルギー問題、生態系危機などといった地球規模の諸問題について、大学や研究機関の専門家による状況解説と未来へ向けた打開策が提示された。

ここで示されていたのは、サバイバーとして生き抜くわれわれの姿。だがそれはある仮定に対する回答のひとつでしかない。問題意識と対策のその明快さは、ここで語られた「世界」をいつもより慎重にみつめてしまうには十分すぎた。はたして、問題はほんとうに問題なのかと。


一方、秋葉原に昨年オープンしたイヴェントスペース「アキバ・スクエア」では、「シュリンキングシティ×ファイバーシティ@アキハバラ」が開催されている。成長し続ける世界のなかで縮小する都市。グローイングのなかのシュリンキングという「世界」に着目。地球規模の都市の数値化とそれらを意味深にヴィジュアライズするやり方は、建築家、都市計画家らによる都市介入のためのあらたな手だてともとれるが、こちらも前展同様、地球という大きなスケールで起こりうるある仮定に基づいた、丹念なリサーチと非常に興味深い都市への提案である。

人類初の無人人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げ成功からすでに半世紀が過ぎようとしている。当時の人々は地球外という新たなまなざしを手に入れ、そのイメージを強く記憶に残し、現在ではより豊かな地球規格の視点を享受できるまでに至った。その豊かさによってはたしてどれだけの「世界」の出来事や問題を理解しうるのか。どれほどのリアリティを感じることができているのか。あらゆる問題が産み出されていくなかで、真に大きなサバイバルが必要ならば、そのきっかけは少なくとも単なる好奇心を超えたところにあると思いたい。

展覧会の詳細:シュリンキングシティ×ファイバーシティ@アキハバラ

Ayumu Saito

Ayumu Saito

Editor of Architect Magazine 1979年生まれ。編集者。大学卒業後、ギャラリーオーナーアシスタント、ウェブ制作会社アルバイトなどを経て、現在、編集事務所勤務。おもに、建築雑誌や美術関連ウェブサイトの企画・編集・制作をおこなう。