会田誠 x 山口晃 「アートで候」

上野の森美術館にて会田誠と山口晃による2人展「アートで候」が開催され(2007年05月20日 〜 06月19日)盛況のうちに幕をを閉じた。

poster for Makoto Aida & Akira Yamaguchi

会田誠 x 山口晃 「アートで候」

上野、谷中エリアにある
上野の森美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2007-05-20 - 2007-06-19)

In 特集記事 by Yukiko Ishii 2007-07-03

会場では、予備校時代の作品を導入として今回の展示の為に描かれた新作まで展示してあり、両氏をよく知っている人も、そうでない人も幅広く楽しめる構成となっていた。私見になるが、ここではいくつか印象に残ったものをお伝えしてみたいと思う。

「大山椒魚 (2003)」「ジューサーミキサー (2001)」「滝の絵 (2007)」

会田誠は女子高生、エログロ、社会問題など多様なテーマをジャンルに縛られることなく発表してきた先鋭的なアーティストだが、きわめて地道な画家という側面も持っている。今回の展示されていた絵画の中でも3メートルから4メートル以上の高さの「大山椒魚(2003)」「ジューサーミキサー(2001)」「滝の絵(2007)」と並んだ3枚の絵は特に見ごたえがあった。大きい絵を鑑賞できるスペースを、日本の住宅で確保するのは難しいので、日常の中では空間を絵によって支配される体験が少ないように思う。3点の絵のどれも、絵の前に立つだけでなく首を動かして画面全体を見渡す必要があったり、少し距離をおいたり近付いてみたりと見るために体を使い、絵に対して集中力を要求するので、時間をかけて鑑賞することができる。

共通して描かれていたのは少女の姿で、世俗的な視線に消費される少女性への対抗や、逆にアーティストとしての視点も超越した冷めた残酷さを持つ客観性も感じられた。しかし、今回の展示の新作「滝の絵」は少女のふとした細かい仕種まで観察していて、今までのようなコンセプチュアルな色合いは影を潜めていたが、会田誠の素朴さや異性を見る少年のようなまなざしを持っていることに気がつかされた。背景に描かれた山があたたかく見守っている印象を与える。他の作品、特に「ジューサーミキサー」との対比によって、より一層少女の無邪気な様子が自然と落ち着いて見ることができる。

伝統的な大和絵の技法を、現代美術に盛り込んだ画風で知られる山口晃だが、今回、会場の2階部分に展示された「山愚痴屋(やまぐちや)澱(おり)エンナーレ2007」(トリエンナーレなどの国際展をもじったもので山口が全出品者となって行うワンマン国際展)では、異なる表情を見ることもできた。会田の要望に応えて新バージョンの制作も行ったということで、山口のコンセプチュアルな面が引き出されている。

では、6/15日に行われた山口晃によるライブペインテイングの様子もレポートいたします。

時間になると、会場にたくさんの人が集まった。山口晃を中心にして見守る人々の姿は、まるで今回展示された作品の「ラグランジュポイント」*1のようだと思った。会場の様子

山口氏は軽快な語り口調で挨拶やちょっとしたおしゃべりなどをしながら、割り箸をとがらせたペンを使い、下にカーボン紙をひいた白い紙にドローイングをする。会場からリクエストをとると、フィギアスケータ−と猫という声がそれぞれ挙がったので、「普段は侍などを描いているのですが」と少し困った表情をしながらも、時折スケートのそぶりをしたりしながら慣れた手つきで描きはじめ、完成すると下に映った絵をさらりと披露した。

左:山口晃作 フィギアスケートと猫、右:ライブペインテイング

その後、マイクを手に、子供のころオリオン座という映画館に一晩中いたことや「ロッキー」でのエイドリアンの話をしていた。そのあと、次のドローイングにとりかかり、天井からひもで吊るした竹にペンを通し5枚同時に描いていく。見守っていると次第に武士の横顔が画面に浮かび上がってきた。

完成図

最後にTシャツ販売の宣伝をしながら、会田誠のTシャツに描いてある女の子はいつでも好きな時にさわれちゃいます、やらしいですね、とつぶやいてすぐに「あ、僕、今なにか大事なものを失いましたか?」と言った。

今回の展示は日本の現代アート界を牽引している2人の総合格闘技戦のような様相も呈していたが、ほどよい緊張感が生まれ飽きさせない展示内容であった。一体勝敗はどちらにあがったのであろうか。しかし、勝負をつけるのはまだずっと先でもいいのではないかと思う。なぜなら2人はアーティストとして生きていくこと、という同じものと向き合い闘っているのかもしれないのだから。

*1ラグランジュポイント(2006)暗がりの中で細い通路を進んでいくと、人一人が立てる場所に辿り着く。そこから見えるのはこちらを見つめる兵士たちだ。片目で見ると奥行きが拡がり更に立体的に見える。彼らのまなざしを受けとめてあなたは何を感じるだろうか。

Yukiko Ishii

Yukiko Ishii. 神奈川県生まれ 日本大学芸術学部美術学科卒 アートとおいしいものが好きです アートで深呼吸 Let's respire together. ≫ 他の記事

コメント

Instagram

人気記事

TABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Tokyo Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Tokyo Art Beat (2004 - 2019) - About - Contact - Privacy - Terms of Use