公開日:2007年9月7日

現代アーティストたちによる「Le Monde de Coco -ココの世界」

シャネルのシンボルがちりばめられた展覧会

太湯雅晴《CHANEL L》部分
太湯雅晴《CHANEL L》部分

銀座の中央通りに、シャネル銀座のビルはあります。何度と無く通り過ぎたことはありますが、入るのは初めてです。このビルの四階で、若手作家たちによる展覧会が行われています。アーティストたちがとらえる「シャネル」がテーマです。

こんな格好で入っても大丈夫かしら…と思いつつ他に着る服もないので微妙な普段着でビルに入ると、同じように少しビビリ顔で場違いな人たち(失 礼!)がチラホラいます。私も含め、その場違いな人たちは商品はあまり見ずに一目散にエレベーターに駆け込みます。そしてシャネルマークの「四階」のボタ ンを押します。ふだんは「アート系」とか言われている人たちは、ここでは「場違い系」なのね。

手前:大野修平《Interior》 奥:海老原靖《COCO#1 COCO#2》
手前:大野修平《Interior》 奥:海老原靖《COCO#1 COCO#2》

作家がスタッフも兼任して持ち回りで監視をしているからでしょうか(言われなくても、すぐにそうだとわかるような雰囲気で落ち着きます)。展示場は 打って変わって、見慣れた雰囲気です。ほっとしながら、入り口でカタログを頂きました。カタログには作家の略歴や、作品の写真と説明…はいいのですが、 <自分にとってシャネルとは何か>が書いてあります。しょっぱいことが書いてあるのかなと、楽しみに読んでみましたが、「尊敬しています。」というような ことが多く書いてあっただけで…別に笑かそうとしてないのね…と勝手に残念がってしまいました。

野口哲哉《シャネル侍2分の1縮尺座像》
野口哲哉《シャネル侍2分の1縮尺座像》
そ れはさておき、展覧会は面白かったです。少し、人数に対して場所が狭いような気もしましたが、入り口からゆっくりと流れるように配置され、中央部分で膨れ 上がり、突き当たりで少し空間ができ…という感じでバランスよく配置されていました。多くの作家はシンボルとしてのシャネルを扱っています。

海老原靖や太湯雅晴はココの肖像画をスタイリッシュに描き、吉田朗や野口哲哉など数名の作家が日本文化と融合を試みています。また菊池省吾の作品は アイコンなどから離れようとしている作品に見えました。しかし、それぞれの作家がシャネルと共に生きようとする作品を作っているのが印象的でした。

そして突き当たりの空間に行くと、奥の小部屋への矢印が謙虚ながらもハッキリと見えます。おそるおそる入ってみると、そこはオークション会場でし た。今回の作品はサイレント・オークションでの入札形式です。小さな小箱に好きな金額を書き込み、入札する方式です。若手作家の作品なので価格が安定して いないと思うのですが、みなさんどんな感覚で入札するのでしょう?そして、今回の販売方式をオークション形式にした意図とはなんでしょう?

吉田朗《犬張り子 シャネラーⅠ・Ⅱ》
吉田朗《犬張り子 シャネラーⅠ・Ⅱ》

シャネルの展示のお客はお金持ちだからオークション形式にしてみたのかしら…という、甘い考えが頭に浮かんでしまいましたが、どうなんでしょう? ファースト・プライス(最低価格)は作家自身が決めているようです。全員ではありませんが、どの箱のなかも沢山の入札が入っているのが見えました。そして 気になる開票日は、ファースト・プライスの倍以上ついた作家や200万円を超える価格が付いた作家もいたようです。

個人的には、この展覧会が終ってからの体感した後の<自分にとってシャネルとは何か>を聞いてみたいなと思いました。

yumisong

ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → <a href="http://yumisong.net">http://yumisong.net</a>