どこでもない場所を描く

個展を開催中の画家・小西真奈さんのアトリエにお邪魔して、作品作りや今回の展示についてお話を聞かせてもらいました。

poster for Mana Konishi

小西真奈 「どこでもない場所」

東京:その他エリアにある
URANOにて
このイベントは終了しました。 - (2007-10-27 - 2007-12-01)

poster for Mana Konishi Exhibition

小西真奈 展

銀座、丸の内エリアにある
第一生命ギャラリーにて
このイベントは終了しました。 - (2007-11-02 - 2007-11-30)

In インタビュー by Lena Oishi 2007-11-20

小西真奈、「Dark Lake」(2007) H.162 x W.194 cm, Oil on Canvas

小西さんの作品はとても独特な雰囲気に包まれていますね。今回の展示でも見られる“自然”と“人”が共に登場するシリーズは、いつ頃から描き始めたのでしょうか?

実はアメリカのボルティモアで大学院生だったころから実験的にこういった作風のものを描いていました。でも実際にそれを意識的にやり始めたのは2003年、日本に帰って来てからです。独特な雰囲気だとはよく言われますが、特に深く考えずに、ただなんとなくこういったものが出来上がったという感じです。

絵が完成されるまでのプロセスを教えてください。

絵は主に写真をベースにして描きます。昔は頭の中で何らかのイメージをしてからそれに合う場所を探して写真を撮っていたのですが、最近はまず場所を探して、実際に行ってみてから自然に任せるというか、そこで見つかったものから作品を見いだすことが多いです。やはり何かしら惹き付けられるような場所を選んで取材しに行くのですが、写真を撮っている段階ではまだイメージは湧いてこない。家に帰って、印刷した写真をボーッと眺めているうちに何かが見えてくるんです。そして、キャンバスに絵具を載せていく段階で始めてイメージが固まってくる。色や影の付け方など、技術的なことはあえてあまり考えませんね。

小西真奈、「浄土 2」(2007) H.162 W.194 cm, Oil on Canvas

場所を選ぶ基準などはありますか?

最近はわりとダイナミックで、日常的でない場所を選んでいます。人から情報を聞いたり、雑誌を見てハッとするような写真を見つけたりして行ってみることが多いです。どちらかというと絵にした時に時代背景とか、国とか、具体的に“どこ”かがわからないところをあえて選びます。建物なんかがあるとそれだけ情報が増えてしまうので、やはり自然の風景が多いですね。自分が描きたい雰囲気が写真にそのまま写ることもあれば、出来上がった写真をトリミングすることによって「どこだかわからない場所」を新たに作ることもあります。

実は一時期、日本庭園を取材したシリーズを描いていました。日本庭園ってすごく作り込まれた、人間が手を加えた“自然”の世界なので、ある意味今回の作品とは逆ですよね。まるで舞台セットのような感じ。そういう“いかにも”日本庭園っぽいところを、キャンディーのような人工着色料っぽい鮮やかな色で描いたら面白いかなと思ってあのシリーズを描きました。

絵を見る限り、本当に様々な場所に足を運んでいるようですね…

最近は特にそうですね。ある場所に2泊くらいして、写真を撮ったりします。帰って来てからの楽しみもあるので、返って取材のための旅は楽しいです。普通の旅行もしますが、貧乏性なので結局取材もしちゃいますね(笑)。

小西真奈、「Awesome Rocks」(2007) H.194 x W.194 cm, Oil on Canvas

人物が登場する絵が多いようですが、それはなぜですか?

人や小屋など、身近なものを登場させることによって“こちら側”と“あちら側”の世界の橋ができるんです。逆に人物がいないと、ただすごく雄大な自然の絵として終わっちゃう。でもそうじゃなくて、やはり非日常の中で日常的な、普通の人を描きたいんですよね。たぶん絵を見る方々も登場人物を通してスッと絵に入り込める。あと、写真に実際に写っている観光客なんかを選んで絵に盛り込むんですけど、絵にする時に、なぜその人物がその場所にいるのかがわからないようにあえてしています。その方が見る側はどうにでも解釈できて、意味が広がってくる。ちなみにどんな人物を選ぶかは特にこだわっていませんし、実際後ろ姿とかが多いので顔は見せていないのですが、自分と同じ世代の人を無意識に選んでいる気がします。そういえば子供とか年老いた人は、あまり出てきません。

どんなことからインスピレーションを受けますか?

今ピーター・ドイグというアーティストがすごく気に入っています。彼の絵を見ていると、本当に何でも作品の材料になるんだなあって感じます。例えば彼は『13日の金曜日』の映画を観て、最後の場面からインスピレーションを受けてその夜に絵を描いたりしているんです。もちろん最終的に出来上がった作品はほとんどその映画とは無関係なんですが、それがまた面白い。なんでも絵になるんだな、ってすごく勇気付けられる作家です。

小西真奈、「山のひと」(2007) H.162 x W.162 cm, Oil on Canvas

今後の活動について教えてください。

最近は人物をメインに、ポートレートを描きたいと思っています。学生の頃にポートレートばかり描いていたんですが、それをもう一度やりたいな、と。私はとにかく手を動かしてアイデアが浮かんでくるタイプなので、今は片っ端から身の回りにある今までボツにしていた写真などをベースに小さな絵をたくさん描いている段階です。顔ばかりを描いたシリーズも試しに描いたりしていますが、やはり写真をベースにしています。瞬きの瞬間とか、首を思いっきり左右に振っている瞬間とか、写真でしか見られない瞬間を描いたり。絵具もいろんな色を試していて、今ハマっているのが蛍光ピンク(笑)。この色は実は今回の写真展の絵にも時々使っているのですが、とにかく発色がいいんです。あと銀色の絵具もあるんですけど、まだ使い方がわからず未使用です。自然の写真ももちろん大好きなので続けますが、今は人物を描きたい気分ですね。

今回の「どこでもない場所」は〈アラタニウラノ〉と〈第一生命ギャラリー〉の2つの展示スペースで開催されていますね。ギャラリーに訪れた方々へ、特に注目してほしい見所はありますか?

フライヤーやインターネットで見るとすごくフォトリアリスティックな絵に見えるのですが、実際の作品はサイズも大きいので、もっと絵画的な印象が強いんです。「写真みたい」と言われることがよくありますが、近くで見るとかなりラフなんです。やはり絵画が好きなので、そういう素質的な部分を大切にしています。それと、〈第一生命南ギャラリー〉の方は大きな作品を中心に展示しているので、是非両方見てみてください。

Lena Oishi

Lena Oishi. 日本生まれ、イギリス+オーストラリア育ち。大学院では映画論を勉強。現在はVICEマガジンやアート/メディア関連の翻訳をはじめ、『メトロノーム11号—何をなすべきか?東京』(2007年、精興社)の日本語監修など、フリーランスで翻訳関連の仕事をしている。真っ暗闇の中、アイスクリームを食べながら目が充血するまで映画を観るのが好き。 ≫ 他の記事

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